2005年度主要政策研究課題

V. 新たな技術革新システムの探求

科学(S)と技術(T)のリンケージ、技術(T)と製品化(I)のリンケージ、日本の技術革新の強みと弱み、地域クラスター、デジタル家電の情報家電に向けての技術革新を解明する。

(1) 科学-技術-産業(STI)ネットワーク

35. STI ネットワークの研究
(a) S-T リンケージ:学術論文と特許の技術分野別関係
(b) T-I リンケージ:技術と商品化するビジネスモデルのあり方等

代表フェロー

概要

現在の政策研究においては、技術革新と新産業創出のための科学技術システムの定量的・科学的分析が不足しており、これが包括的且つ戦略的な産業技術政策を打ち出しにくい要因となっている。
そこで、科学(Science)、技術(Technology)そして産業(Industry)をつなぐ知のインターフェイスを包括的に捉えるべく、日本特許データ等を用いてS-T間のネットワークの定量分析を行う。これにより、「大学や公的研究機関における研究」と「産業におけるイノベーション」およびそれを促進する「制度(政策を含む)」との関係についての理解を深めるとともに、我が国における産業技術政策形成のあり方に示唆を与える。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー

(2) 知的財産権と競争力強化

36. 製品・工程アーキテクチャの産業論に関する理論的・実証的研究

代表フェロー

概要

製品や工程のアーキテクチャ(基本設計思想)が産業競争力や企業の競争戦略にどのような影響を与えるかについては近年関心が特に高まってきている。産業競争力分析にアーキテクチャ概念を導入するためには、アーキテクチャのモジュラー度、インテグラル度の測定が不可欠であるが、この測定手法や理論的基礎付けの整備は十分ではない。
そのために、製品アーキテクチャを理論的に定式化することを目的とし、関連して
(1)製品アーキテクチャ、生産工程、企業組織をコーディネーション・メカニズムの設計という視点から捉え、それらの間の相互依存関係を分析する、
(2)少数の製品を対象として、アーキテクチャの測定スキームの考案と、それに基づく測定に関するパイロット研究を実施する。
分析手法は主に理論研究を中心とし、必要に応じて既存文献のサーベイ、実態調査や実証分析で得られた知見の理論への反映等を行う。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー

37. 我が国半導体産業における国際競争力の決定要因に関する調査・分析

代表フェロー

概要

本調査・研究では、我が国半導体産業の国際競争力が90年代以降急速に低下してきている原因を経済学の視点から分析する。
方法論的には、内外の半導体・装置・材料メーカーへの聞き取り調査が主体である。
半導体産業においては、ムーアの法則に示される急速な技術革新に伴い自動化レベルの急上昇、工程間の相互干渉問題等科学・技術的な意味での複雑性が増大してきている。加えて、この種の複雑性は、運輸・通信システムの急速な発展によるマーケットのグローバル化、豊かさの増大による消費者嗜好の多様化・高級化に示されるマーケットの複雑性の増大を同時に伴っている。我が国半導体産業は、これらの複雑性に直面し、各種の組織限界を露呈しつつあり、研究・開発部門のみならず、設計・生産技術・製造の各部門も弱体化しつつある。しかも同種の傾向が、管理・営業部門でも発生している。本調査・研究では、これらの組織限界がもたらされている諸要因・構図を明らかにするとともにその克服策を探る。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー

38. 中小企業とベンチャービジネスの発展諸段階

代表フェロー

概要

1980年代以降、先進国においては経済再生の担い手としての中小企業の役割や創業の重要性について再評価が行われている。他の先進国においては、どのような中小企業が経済再生に寄与するのかなどについて個別企業データをもとにした分析が数多く行われ、政策形成に大きな影響を与えている。しかし、日本においてはこうした分析がこれまでほとんど行われてこなかった。
そのため本プロジェクトでは、中小企業庁が行ったアンケート調査の個表データ等を利用しつつ、開業水準の決定要因、雇用を多く生み出す中小企業の特徴、中小企業再生の成功要因等政策的問題に対応した分析研究を行うこととする。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETIブックス

RIETI政策シンポジウム

39. 中国とハイテクノロジー:経済戦略とその含意

代表フェロー

概要

本プロジェクトは、中国政府による自国ハイテク産業を振興し、経済成長のエンジンにしようという戦略的政策を分析することを目的とする。研究では、中国のR&Dの構造、イノベーションシステムを分析し、いくつかの卓越したハイテク企業へ与える効果についてケーススタディを行う。こうした企業が先進国(日、韓、米)のライバルに対して競争力を得ようと必死に取り組む中で、こうした政策からどの程度恩恵を受け、あるいは損失を被っているかについて議論する。
第2に、本プロジェクトでは、中国のハイテク産業分野に進出している外国企業の観点に立って、近年の産業発展を受けて彼らが戦略を進化させているか、あるいは中国ハイテクセクターの競争力の向上にどのように対応しているかについて分析する。
最後に、本プロジェクトでは、こうした中国ハイテク産業の進化が、より広い経済的含意として、中国の経済成長の見通し、国レベルの産業競争力、貿易構造の変化、資本や人的資源の動きに与える影響についても若干の議論を行う。

主要成果物

  • 継続プロジェクトにつき、引き続き研究を実施中

40. マルチサイド市場におけるイノベーションと規制

代表フェロー

概要

本プロジェクトは、消費者が多種多様な製品を購入したり、そうした製品にアクセスしたり、利用したりすることのできるプラットフォームの周辺に組織化されるハイテク産業に関する研究である。こうしたプラットフォーム、あるいはプラットフォームが機能する市場のことをマルチサイド市場という。テレビゲーム産業におけるゲーム機というハードウェアをプラットフォームとし、ゲームソフトの生産者、ゲームを楽しむ消費者がいるといった関係が1つの例である。こうした市場ではゲームソフトといった製品の大部分がサードパーティーに属する生産者あるいは独立の生産者によって供給され、プラットフォームが成功するためには適切な価格付けによりプラットフォームが生産者と消費者を同時に引きつけることが必要だからである。この形の産業組織は、「ニューエコノミー」のコアに位置する産業、すなわちコンピュータ、家電、携帯電話のような通信機器といった産業で最も重要になっている。
このプロジェクトでは、ケーススタディと経済モデルによる分析を行う。実証分析面では、ソフトウェアのプラットフォームの直感的には理解しづらいビジネスの側面の理解を助けるケーススタディとモデル分析を行う。政策的分析面では、同じくモデルによる分析とこうした産業を対象とした実際の政策および可能性のある政策についてサーベイを行う。
このプロジェクトの主要なゴールの1つは、特に、日本の家電産業における収益性と国際競争力の向上を目指し経済産業省が現在取り組んでいる産業政策の立案に対して有用な情報を提供することである。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

41. 東アジア経済の統合と日本の都市集積

代表フェロー

概要

国際経済関係のボーダレス化が着実に進展しており、東アジアにおいても経済統合は着実に進展している。グローバリゼーションの中で急速に進んでいる東アジアの工業化と、日本の経済構造の変容とには相関があり、日本の地域構造の変化は東アジアにおける経済発展の大きな流れの一部分であると考えられる。
即ち、近年の日本の「産業の空洞化」や「産業基盤集積の衰退」も、あるいは東京への集中の再現も、東アジアにおける国際地域経済システムの形成と発展という、よりグローバルなプロセスの部分的な現象であるととらえることができる。このような経済現象の背景には、多くの場合、規模の経済が本質的に働いていると考えられることから、当プロジェクトにおいては、新しい空間経済学の成果を取り入れつつ、基本的には外部経済・不経済をなるべく内部化した上では都市への集中は抑制すべきではないとの認識に立ち、以下の通りの論点に関し研究を進めている。
(1)国土の均衡ある発展というコンセプトの再検討を行う。
(2)都市集積のメリットに関しては、既存の研究を発展・改善させ、都市集積の利益の測定、通勤の混雑費用と望ましい政策について分析する。また、東京と大阪の港湾の現状と今後のあり方、関西の再生等についても考察する。
(3)東アジア各国間の分業構造の変化に関しては、その実態およびそれと日本の都市・経済集積のポジションニングとの相関について検討する。また、東アジア全体の地域集積の応用一般均衡モデルの構築に関しては、既存のデータベースの改良によりそれに基づくシミュレーションを行う予定である。
(4)経済集積の成長や変化は、ハード、ソフト両面でのインフラストラクチャーの整備に相当の影響を受けることに鑑み、適切な産業政策、都市・地域政策のあり方を検討する。その一環として、地域のいくつかの行政サービスに関し、その改善策、費用と規模の関係等について考察するとともに、都市型の産業に共通する課題について考察する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETIブックス

42. 日本企業のグローバル経営とイノベーション

代表フェロー

概要

知識経済化時代においては、先進的なグローバル企業は、イノベーションを企業成長のエンジンとして位置付け、このグローバル最適なイノベーションチェーンの構築等により、製品・サービスのダイナミックな差別化を図り、市場でのダイナミックな競争力の確保に努めている。
本研究では今後の日本企業のグローバル経営に向けての対応を検討するための新たな視座を提供するため、以下の2つの取り組みを行う。
(1)21世紀の日本企業のグローバル経営にとって必要な要素を、企業の形の要素、組織設計、グローバル経営上の組織能力等について明らかにして、知識経済化時代の日本のグローバル企業の業種別の組織設計、組織能力設計のあり方を含む企業の製品供給とイノベーションに関する行動原理の新たな全体像を示す研究のフレームを構築する。この妥当性を日本の先進企業等のケースにより確認する。
(2)政策当局、研究者、企業関係者、等に対し、以上の研究成果により明らかになった諸点をまとめて提言する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETI政策シンポジウム

43. 我が国における知的財産権を巡る動向とその評価

代表フェロー

概要

バブル崩壊後の低迷する経済状況からの脱出、特にグローバル化の中で追い上げてくる中国等に対抗しつつ21世紀を生き残るためには、より一層のイノベーションの進展を図り、我が国の産業競争力の維持・強化が必要である。このイノベーションのための環境整備の一環として、80年代の米国に倣い、かつての技術の普及重視の立場からいわゆるプロパテント化への転換が90年代後半頃から主張されはじめ、更に2002年には小泉総理の施政方針演説中に「知的財産を国家戦略に」と唱われ、それを受けて知的財産大綱及び基本法制定、施策の実行部隊としての知的財産戦略本部設置(2003年)へと至っている。
知的財産の重視は技術開発を促進し、また高付加価値化にも繋がり望ましいが、他方で重要なのはあくまで知的財産の創出であって知的財産「権」の創出ではないこと、及び知的財産「権」はその本質として排他性を持つことから市場に対し歪み、乃至悪影響を与える可能性もある。よって、知的財産「権」については、その保護強化と市場での競争とのバランスを取る必要がある。因みにプロパテントの本家たる米国においても、近時競争政策の観点からその見直しが進みつつある。
しかるに昨今の動きは、プロパテントの名の下に知的財産「権」強化になっていないか。この点について、90年代末から現時点に至る知的財産権の発展・動向を整理し、プロパテント化に梶を切った際の「本旨」に立ち返り改めて評価すると共に、今後の在り方を検討する。

主要成果物

  • 継続プロジェクトにつき、引き続き研究を実施中

(3) 地域クラスターと産学連携の高度化

44. TAMAを中心とする地域クラスター研究

代表フェロー

概要

最近になって製造工場の国内回帰傾向が現れているものの、中長期的に産業空洞化の懸念を克服し我が国経済の再生を確実なものとするためには、高付加価値製品を次々と生み出す産業構造の構築が必要。TAMA(技術先進首都圏地域:Technology Advanced Metropolitan Area)には、大企業の開発拠点、理工系大学と並んで製品開発型中小企業が集積し、その集積のメリットを生かして設立されたTAMA協会が、各般の産学連携推進および新事業支援の活動を行い、各地の産業クラスター計画の中でも最も進んだ活動を行っている。
このようなTAMAにおける産業クラスター形成およびイノベーションのメカニズムを明らかにすることにより、我が国における地域クラスター(産業クラスターと知的クラスターの総称)形成のあり方に示唆を与える。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー

45. 研究開発に関する外部連携とイノベーション

代表フェロー

概要

国際的に研究開発競争が激化する中で、これまで自前主義といわれていた日本の大企業は研究開発における他企業、大学、公的研究機関等外部機関との連携(「外部連携」)を活発化させている。このプロジェクトにおいては、RIETIが実施したアンケート調査「研究開発外部連携実態調査」の個票データを用いて、企業の研究開発に関する外部連携とパフォーマンスの関係について定量的分析を行う。また、このところ外部連携型のイノベーションシステム改革が進んでいる中国におけるデータを用いて、日中の比較分析を行う。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー