世界25カ国の産業別名目・実質実効為替レート
概要
経済産業研究所(RIETI)の「為替レートと国際通貨」プロジェクトでは、アジアにおける望ましい為替制度の構築を目指して、為替レート変動が貿易に及ぼす影響に関する研究を進めている。この研究の一環として、横浜国立大学経済学部附属アジア経済社会研究センターと共同で、2011年6月より産業別の名目実効為替レートおよび実質実効為替レートを構築・公開してきた。
一般に輸出価格競争力を測る指標として実質実効為替レートが広く用いられるが、輸出価格競争力を産業別に測る「産業別実質実効為替レート」(Industry-specific Real Effective Exchange Rate: I-REER)を公表したのは本研究が初めてである。2015年3月からアジア9カ国の産業別名目・実質実効為替レート、2016年4月からは欧州・北米・オセアニア9カ国を加えた世界18か国の産業別実効為替レートが月次データと日次データの両方で公表された。2018年2月からは、新たに7カ国を含めた世界25カ国のデータを公表する。
アジア諸国
欧州・北米・オセアニア9カ国
その他欧州・オセアニア7カ国
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※最終更新日:2024年10月11日
月次データは毎月初めに更新、日次データは平日毎日更新
データの説明
このデータベースの最大の特徴は、アジア・欧州・北米・オセアニア諸国を中心に対象国の「産業別の生産者物価指数」を収集し、実質実効為替レートを産業別に構築している点にある。実質実効為替レートは当該国の輸出価格競争力を測る指標として用いられるが、実際には、輸出価格競争力は産業別に異なりうる。たとえば、日本の電気機械産業(例:電子部品)と輸送用機器産業(例:自動車)の競争力が異なることは容易に理解できるだろう。Sato, Shimizu, Shrestha and Zhang (2013) は、産業別実質実効為替レートを用いて日本と韓国の両産業の輸出価格競争力を比較している。
産業別実質実効為替レートの用途は、「産業別」のデータとしての利用にとどまらない。各産業の加重平均値である「全産業」の実質実効為替レート(Avg-I-REER)は、当該国の輸出競争力を測る優れた指標である。Sato, Shimizu, Shrestha and Zhang (2015) は、BIS (Bank for International Settlements) が公表する実質実効為替レート(BIS-REER)との比較分析を行い、アジア9カ国のうちの5カ国において、Avg-I-REERとBIS-REERの動きが大きく異なることを示している。さらに、Avg-I-REERで測った実質実効為替レートの増価は実質輸出に有意に負の影響を及ぼすのに対して、BIS-REERを用いた場合は実質輸出に有意な影響を与えないことを実証分析によって明らかにしている。
また、昨今の急激な円レートの変動が示唆するように、為替レートは数日でも大きく変化しうる。月次データではこのような短期の為替レートの変化をタイムリーに観察することができない。それを可能にするために、月次と日次の両方の実効為替レートを構築し、ここに公開する。
このデータベースの作成を担当したのは、横浜国立大学の佐藤清隆教授、シュレスタ・ナゲンドラ准教授、章沙娟氏、そして学習院大学の清水順子教授である。
産業別名目・実質実効為替レートのデータ構築の詳細はSato, Shimizu, Shrestha and Zhang (2013, 2015) で説明されている。産業・相手国別貿易ウエイトについては、追加資料 [PDF:658KB]を参照されたい。本データベースの利用に際してはRIETIのウェブサイトからダウンロードしたことを明記するとともに、謝辞として下記の論文を引用して頂きたい。
- Sato, Kiyotaka, Junko Shimizu, Nagendra Shrestha and Shajuan Zhang, 2013, "Industry-specific Real Effective Exchange Rates and Export Price Competitiveness: The Cases of Japan, China and Korea," Asian Economic Policy Review, 8(2), pp.298-321.
- Sato, Kiyotaka, Junko Shimizu, Nagendra Shrestha and Shajuan Zhang, 2015, "Industry-specific Real Effective Exchange Rates in Asia," RIETI Discussion Paper, 15-E-036.