プログラム (2020年度-)

2020年4月から4年間の第5期中期目標期間においては、過去19年間の成果を発展的に継承し、引き続き「知のプラットフォーム」としての機能を高め、国際的にも一層高く評価される政策シンクタンクを目指してまいります。

第5期プログラム概要

マクロ経済と少子高齢化

長期的な成長の持続が世界経済の共通の課題となる中、我が国は他国に先駆けて急激な少子高齢化に直面している。我が国の経済活力を維持し、今後の世界経済の発展に貢献する政策提言に資する研究を展開する。具体的には、アジア地域の産業間・産業内サプライチェーンのあり方、国際金融と世界経済動向、長期経済停滞のメカニズムなどを分析する。また、包括的高齢者パネルデータの分析、社会保障と税財政の一体改革の方向性、コロナショックによる経済変動と産業構造変化へ向けての政策提言などに関する多面的かつ統合的な研究を行う。

貿易投資

経済産業政策の立案には内外の経済に関する深い理解が不可欠であるが、グローバル化の進展により国際経済に関する研究が一層重要となっている。特に、世界的な不確実性の高まりの中で、政策的関心に応えるとともに、長期的趨勢の把握が求められる。そこで、国際貿易、海外直接投資、その他の実体面における様々な国際経済活動について、政府統計の個票や独自調査に基づくミクロデータを含む各種データを用いて計量実証分析を行うとともに、経済学のみならず法学の観点から我が国の対外経済政策、諸外国の貿易政策、国際通商ルール、企業のグローバル展開等に関する研究を行う。

地域経済

地域ごとの異質性を考慮して「場」あるいは「地域」の特徴に基づいて実施する政策(place-based policies: PBPs)を体系化する。イノベーションと国際競争で先導的役割が期待される大都市では、集積の経済的メリットを活用しつつ、混雑から生じる弊害を抑制するような、インフラや、経済主体への支援を明らかにする。地方では各地域に固有な地域資源を革新的かつ持続可能な形で利用して高い付加価値を生む生産活動を行っていく構造転換を促すネットワーク、コミュニティ、制度設計のあり方を明らかにする。大都市と地方のバランスの最適化を図る政策についても研究を進める。

イノベーション

新たな知識の創造とその経済的あるいは非経済的な問題解決への活用が、第四次産業革命を含めたイノベーションの根幹である。その過程を把握できるオリジナルなデータの開発を行い、それによる国際水準の研究、ならびにイノベーション加速化のための政策形成に貢献する分析を行う。具体的には、産業のイノベーション能力、政府の研究開発支援政策、垂直分業などイノベーションを促進する産業組織の構築メカニズム、知的財産制度や技術標準制度のあり方、産学連携などを分析する。イノベーション・パフォーマンスの国際比較を含めて、国際的な視野に立った研究を行う。

産業フロンティア

デジタル技術が社会実装され、デジタル空間とリアル空間との融合が現実のものとなりつつある中で、技術的進展を効果的に取り込むために、わが国における経済社会システムの再設計し、新たな産業フロンティアを創出することが求められている。データを中核にして、様々な経済活動が融合しつつある時代を迎え、従来型の個別産業の政策に加えて、産業横断的な政策を視野に入れて、わが国経済が直面する課題を乗り越えるための政策のあり方などについて研究を行う。

産業・企業生産性向上

日本は1990年代以降、人口一人当たりGDPや実質賃金率の上昇で見て、米英独など他の先進諸国に大きく後れを取った。その主因は全要素生産性(TFP)の停滞と2000年代半ば以降の無形資産や情報通信技術(IT)資本を含む、資本蓄積の著しい停滞であった。本プログラムでは、日本と中国の産業レベルの生産性と要素投入に関するデータベース(JIPデータベースおよびCIPデータベース)や都道府県別に各産業のTFPを計測するR-JIPデータベースを更新・整備し、これらデータベースや企業・事業所レベルのデータを用いた実証分析により、生産性向上と投資促進のためにはどのような政策が必要かを研究する。

人的資本

急速な高齢化の進行による人口減少、グローバル競争の強まりに加え、ICT、AIなどの新たなテクノロジーが経済社会を更に大きく変容させることが予想される中で、資源小国である日本がその強みを活かしながら、経済活力・革新を維持・強化し、成長力を高めていくためには、人的資源の活用が大きなカギを握っている。AI時代に相応しい雇用・労働システムの再設計、AIと補完的になるような能力・スキル形成やそのために必要な教育・訓練改革、健康経営など労働者のウェルビーイング向上のための方策のあり方などに関して、独自のデータ・セットの活用も進めながら、多面的・総合的な研究を行う。

融合領域(旧:法と経済)

日本経済が抱える大きな問題に垣根の存在がある。これまでRIETIは正規労働者・非正規労働者の垣根、職場における男女の垣根など、経済におけるさまざまな垣根の問題を扱ってきた。また、学問の世界も垣根の問題に悩まされ続けてきている。文系理系の垣根、法学と経済学の垣根、マクロ経済学とミクロ経済学の垣根、理論と実証の垣根など、さまざまな垣根を壊すことが、イノベーション力を高め、組織の高度化を図る上でも不可欠だろう。融合領域プログラムでは、このような視点に立ち研究に取り組み、理系分野や法学、政治学、社会学など異分野の新しい知見を経済学・政策研究に取り込む。

政策評価

政策評価プログラムでは証拠に基づく政策立案(Evidence Based Policy Making, EBPM)を加速させるため、EBPMの在り方に関する研究と個別政策の評価に関する研究を並行して進める。EBPMの在り方に関する研究については、政策担当者がどのように証拠を準備すべきか、その証拠を基にどのように政策立案を行うべきか、現実に証拠に基づく政策立案はどの程度実行されているのか、などをメタ視点より分析する。個別政策の評価に関しては、高質なミクロデータとミクロ実証経済学的手法を用いて、教育、労働、租税、社会保障などの分野において政策立案に資する信頼性の高い証拠を提供する。

特定研究

RIETI第5期の研究体制について

RIETIは第5期中期計画(2020~2023年度)において、以下のように研究を推進してまいります。我が国は、少子高齢化に伴う人口減の深刻化、エネルギー・環境問題などの直面する諸課題に対応するため、AI・IoT・ビッグデータなど第4次産業革命を進展させ、「Society5.0」を実現することが求められています。そのためには、新技術の社会実装とともに「組織」と「人」の変革を進め、経済社会システム全体の再構築を図る必要があります。
こうした視点の下、RIETIの強みである「中立的な立場からの理論的・実証的な政策研究の実施および政策提言」「内外の幅広いネットワークを活かした研究体制」「ミクロデータ等を用いた幅広い政策的ニーズへの的確な対応」を活かし、研究をレベルアップするとともに政策立案への貢献に努めます。特に第5期においては、①社会科学的な要素と産業技術の融合(いわゆる文理融合)、②民間のビッグデータの活用及び独自のデータ構築、③EBPM(Evidence Based Policy Making)に資する政策評価分析というタイプの研究に注力することとしています。
一定のまとまりを持つ政策研究分野を「研究プログラム」(下図参照)として設定し、各研究プログラムの下で複数の研究プロジェクトを実施していきます。なお、研究の進捗状況や経済情勢の変化に伴う新たな研究ニーズを踏まえつつ、必要があればプログラムの変更・追加を行うこととします。

第5期研究(概念図)

研究プロセス

研究の質を高めるとともに政策とのリンクを図るため、政策当局者を交えた議論の場(ブレインストーミング・ワークショップ、DP・PDP検討会)を設けています。

研究プロセスのイメージ