容積率緩和による通勤鉄道混雑への影響

執筆者 寺崎友芳  (日本政策投資銀行調査部)
発行日/NO. 2005年4月  05-J-017
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概要

本稿では、丸の内・大手町地区で容積率を1000%から2000%に引き上げた場合の通勤鉄道の混雑率の変化とそれに伴って増加する疲労費用を金銭換算する。

丸の内・大手町地区で容積率が2000%になった場合、同地区の従業者数は15.3万人から最大42.9万人にまで27.6万人増加する。そのとき、ピーク集中率と集中原単位は不変、容積率緩和地区に通勤する従業者の居住分布と通勤経路は不変という2つの仮定を設けて首都圏の全駅間の混雑率の変化を予測すると、現在の首都圏の主要34路線の最混雑区間のピーク時平均混雑率は179%から187%に8%ポイント上昇する。平成2年度は212%であったので、容積率緩和によって上昇するのは、この間の減少幅の1/4程度である。次に、山鹿・八田(2000)で推定された疲労費用関数を援用し、全駅間の疲労費用の増分を算出すると、首都圏合計で年間430億円になった。路線別でみると、東海道線が77億円で最大となった。丸の内・大手町地区で容積率を緩和する場合、このような増加疲労費用の大きい路線について保安装置の改良等による運転本数の増加、二階建て車両の導入などの輸送力増強投資に対してインセンティヴづけを同時に行うことが容積率緩和の負の効果を最小限に抑えることに有効である。