製品アーキテクチャ論と国際貿易論の実証分析(2006年改訂版)

執筆者 大鹿 隆  (東京大学COEものづくり経営研究センター) /藤本隆宏  (ファカルティフェロー/東京大学大学院経済学研究科)
発行日/NO. 2006年3月  06-J-015
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概要

本稿では、藤本隆宏「アーキテクチャの比較優位に関する一考察」で展開された「アーキテクチャの産業論」が提起した命題、すなわち「統合型ものづくり」(Integration-based Manufacturing)の組織能力を戦後に構築してきた日本企業は「擦り合わせ型」(Integral Architecture)の製品と相性が良く、したがって日本の純輸出財の多くは相対的に「擦り合わせ型」である、という命題の実証分析を試みる。具体的には、経済産業省と共同で実施した企業アンケート(33社、254製品)の回答について、擦り合わせの強度を主成分分析でアーキテクチャ・スペクトル指標(連続量)として作成し、それぞれの製品のインテグラル度(擦り合わせ度)、モジュラー度(組み合わせ度)の相対的ポジションを示した。次にアンケート調査の対象製品を組立製品とプロセス製品に分けて、アンケート回答結果の輸出比率とアーキテクチャ・スペクトル指標との回帰分析を実施した結果、上記命題と整合性のある実証分析結果を得た。また、説明変数として、アーキテクチャ・スペクトル指標のほかに労働集約度を説明変数として追加した回帰分析でも組立製品では統計的に有意な結果が得られており、その結果は、「組立製品ではインテグラル度、労働集約度ともに高いほど、輸出比率が高くなる傾向があり、また国際競争力が強い」というものであった。これらの結果は国際貿易論に対する新たな展開を示唆する可能性もある。