中小企業のコーポレートガバナンスと雇用調整

執筆者 齋藤隆志  (京都大学大学院経済学研究科博士課程) /橘木俊詔  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2005年6月  05-J-023
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概要

本稿では、中小企業の5時点にわたるパネルデータを用いて、企業の内部統治構造を特徴付けている役員比率、筆頭株主、代表者の経歴が、雇用調整にどのような影響を与えているかについて検証した。その結果、製造業においては従業員が昇進して役員や代表者になる企業においては、雇用調整速度が速くなることが確認された。また、非製造業においては、役員に占める創業者の同族比率が高い企業ほど雇用調整速度が遅くなることと、代表者が創業者の同族である場合は、社内から登用された代表者を持つ企業のほうが雇用調整速度は速くなり、代表者が創業者の同族ではない場合は、社内から登用された代表者を持つ企業のほうが雇用調整速度が遅くなるということが確認された。この結果から、非製造業の中小企業においては、従業員主権型の企業では、従業員重視の経営が行われているのに対して、製造業の中小企業においては、経営者や役員のルーツが従業員であるからといって、必ずしも従業員重視の経営になるわけではないことが示された。