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総論
ここでは、報告書II「基本的な戦略」について、執筆者の村上敬亮情報政策課長補佐、森川毅情報経済課係長が解説します。ここでは、基本的に報告書第II部で論じている、戦略Iとしての、新しいイノベーションを核とした収益モデル構築への戦略、そして戦略IIとして、従来から強みを発揮してきた部分をどう伸ばしていくかについて、議論を進めていきます。
2004年11月28日 キラーアプリを忘れよう
先週、このレポートをテーマに、経済産業研究所でBBLをやりました。その場で、松下でTナビをやっておられる大野さんに言われてハッとしました。「このレポート、コンテンツと言わずにサービスと言ってくれているところが有り難い。」と。
情報家電を議論すると、よく言いますよね。「ニーズを顕在化しようとしても、そもそもメーカーにもユーザにもニーズがない。消費者側にそもそもニーズがない。だから、キラーアプリを探せ。キラーコンテンツは何か?」って。これがそもそも、いけないような気がするんです。
下手な三段論法で恐縮ですが、キラーアプリがあるということは、キラーアプリをサポートする端末があることを意味する。中心となる端末が見えれば、ビジネス全体を先に囲い込める。したがって、キラーアプリ、キラーコンテンツという発想は、情報家電の中で、中心的位置を占める端末、機器は何か、その機器を上手く囲い込みたいという発想の裏返しである。今日は、そういう議論で行ってみます。。
そう思うと、そもそも、キラーコンテンツという発想自身が「モノ」にしばられてはいないでしょうか。もしかすると中心となる機器なんかないかもしれない。そう、まず考えてみることは出来ないでしょうか。
今回のレポート、「情報家電」、「情報家電」と連呼しているけど、そもそも何のことを指しているの? っと良く聞かれます。個人的には、どうしても困るのであれば、最初はテレビからイメージすればいい。でも、例えば、白物家電の扱いが色々な意味で難しいということも良く分かるけれども、白物だからいけないということもないでしょうと。大切なことは、最初から囲い込めるビジネスなど、スタート時点にはない。むしろスタート時には、複数のキラーコンテンツが特定のハイエンドな人たちの中に手付かずで残っているいることが多い。その複数のキラーコンテンツをサービス提供に引き直してくるサービス提供体制の構築が重要なのであって、キラーコンテンツを探せと言ってしまうと、それがサービスの手前の機器の設計とその販売の話に止まってしまうということなんです。
小難しく言えば、ビジネスアーキテクチャ、言い換えると、ビジネスのデザインですよね。そのためにも、むしろキラーコンテンツは一つではなく複数あった方がよい。逆に、複数見えないから、機器の設計の話になってしまってサービスのアーキテクチャの話にならない。そのこと自体に、僕は大きな問題があるような気がするんです。
キラーアプリと中心的な端末が見えなければ、情報家電のイメージがわからず議論になりにくい。確かにそうなんですけれど、だからこそ、逆に、人に真似されにくいビジネスモデルも作れるんじゃないでしょうか。今の家電業界の最大の問題は、規格化された商品を大量に売るために、キラーコンテンツを探していることにある。そこから議論を始めてしまうことにある。キラーアプリは結果として出てくるものではあっても、それ自身を目的として探すものではない。といことかなと。
コンテンツ。自分もかなりこの言葉にはこだわりと思い入れがあります。ここでコンテンツ自体が大切でないといことを言いたいんじゃないんです。もうずいぶん前のことになりますが、日経の一面で始めてコンテンツという言葉を記事に使っていただいたとき、その記事にはものすごく思い入れを込めました。そうしたら、当時、注釈として「情報の内容」と書いていただいて、「うーむ」と唸ったほろ苦い思いでもあるんです。でも、情報家電ということを考えると、今は、コンテンツの議論を強調しすぎない方がよい。そう大野さんに指摘をいただいたような気がして、思わず、「うーむ」と唸ってしまいました。
じゃあ何から入るか。たくさんの旦那衆に活躍して欲しいという思いは、前回述べたとおりです。加えて大事なのは、複数のキラーコンテンツをまとめあげる「サービスの形」、サービスのアーキテクチャをデザインすること。そのために、キラーコンテンツを絞り込まずに、たくさん目の前に羅列して、それと自分の技術シーズをじっと並べて比べること。その上で、どれかのキラーコンテンツを選んでしまうのではなく、複数のキラーコンテンツを飲み込めるよう、自分の持てる技術を「汎用化」すること、なんではないでしょうか。そして、経営と技術の双方から見える共通言語で、「汎用化」された技術シーズを語る。そこから入れば、オープンアーキテクチャ論議も、もう少し、オープンかクローズかと言った単純ではなく、必要性に迫られて可視化せざるを得なくなる構図から見えてくる。これが、僕が参照モデルに議論を傾けていっている、もう一つの意図なんです。。
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2004年11月28日掲載