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総論

ここでは、報告書II「基本的な戦略」について、執筆者の村上敬亮情報政策課長補佐、森川毅情報経済課係長が解説します。ここでは、基本的に報告書第II部で論じている、戦略Iとしての、新しいイノベーションを核とした収益モデル構築への戦略、そして戦略IIとして、従来から強みを発揮してきた部分をどう伸ばしていくかについて、議論を進めていきます。

2004年10月11日

村上です。知り合いの中小製造業系のベンチャー企業の社長さんから、「中小製造業からすれば、いずれにせよ情報家電は儲かりません」という、冷静なコメントを頂戴しました。

今回のレポートでは、情報家電を活用した医療、教育、AVその他のサービスを活性化させることで、ジリ貧を回避しよう。と主張してるんですが、「そうじゃなくて、そもそも情報家電は儲かりません」っと。もちろん、中小製造業という立場からすれば、ということなんですが、興味深いコメントなので、ご本人にお許しを得て、そのコメントの一部を転載したいと思います。

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中小製造業の現場では、もはや情報家電は儲からん、というのが一致した意見となってきています。冷蔵庫や家電機器はハードウェアが残りますが、デジタル家電にハードウェアはほとんど必要ありません。某大手家電メーカの一次下請けの社長と先日も風呂に入りながら話しましたが、某社をあてには出来ない、とハッキリ仰っていました。その理由は、いつライバルが現れて、家電メーカの思惑どおり売れなくなるか、まったく読めない時代になった、ということです。

10数年前までの常識だとビデオやTV、オーディオ機器などは生産予定が出てきた場合、かなりの確率でオーダーが入るのが普通でしたが、現在ではメーカーからの仮発注数は、来ないのが前提で生産体制をつくっているのが現状です。ここが情報家電が儲からん大きな理由ではないでしょうか?

小売を含めた生産最適化を行わない限り情報家電メーカーは儲かりません。また、中小製造業の立場からすると情報家電メーカーはすでにソフトメーカーに変貌しているためあまり付き合いたい相手ではありません。村上さんの書かれたテキストを今後、中小製造業施策に反映するのであれば、そのあたりをぜひ反映させて欲しいと思います。

このところ製造業界はかなり忙しくなってきました。
1、中国移転が一段落した
2、中国需要に日本メーカーが対応するようになった
3、中国需要に伴い、造船、鉄鋼までもが忙しくなった
以上が主理由かと思います。
業界別で見ても、建設業界以外はすべて忙しいのが現状かと思います。

自動車絶好調、弱電家電もそこそこ利益を出す体質になったところで、設備投資も回復してきました。不良債権もほぼ出尽くした感じですし、各メーカーが健全な体質に戻ってきたところです。
僕の予想では今後10年は、この景気が続くと思います。不安要素であった中国もむしろ日本にとっては上向きの風となってきました。中国が成長すると日本から材料、金型、輸送機器を買わねばなりません。ということでここらで次の10年先を見据たVisionが必要かと思います。

情報家電は儲かりませんが、村上さん、自分の身の回りを見渡してください。洋服、本棚、寝具、テーブル、台所用品、などなど・・・自分が支出するお金の内訳を考えていただければと思います。ほんとに儲かるのはこれら顔が見える商品ではないか、と僕自身は考えています。大量生産品と小ロットブランド品の両極を見据えてコストパフォーマンスを考えた商品作りに対応できるようになってこそ世界ブランド「MadeinJAPAN」が完成します。

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以上が引用ですが、別の言い方をすると、こうも言えるでしょうか。

情報家電のソフトウエア化が進めば進むほど、中小製造業でやる仕事ではなく、インテルや富士通や日立の仕事でほとんどが終わる。儲かるのは特許を持ってる企業と大手メーカーだけ。昔のビデオやTVはハードウェアの塊だったので、中小製造業の技術が製品の良し悪しを左右したし、つくり手の中小製造業は儲かった。

これからは、製品の機能だけではなく、ブランド、イメージといった価値を全面に出した製品づくりが必要。その両立を可能にするような生産体制を構築できた産業だけが儲かっていく。その中に如何に上手く立ち位置を見つけるかが、中小製造業の生きる道なのではないかと。。

- 情報家電のソフトウエア化
- 生産の最適化と儲けの関係
- 製品の機能から価値へのシフト

いろいろな視点から議論の深められるご意見だと思います。個人的には、深く納得してしまいました。

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2004年10月11日掲載