都市経済の自立と持続可能性を考える

中村 良平
ファカルティフェロー

1. 都市政策としての都市経済

都市を対象に研究する学問分野は意外に数多くある。具体的に言えば、都市社会学、都市地理学、都市行政学、都市工学、都市計画学、そして都市経済学などである。それらは、都市の現象を社会学的に考察したり、空間的に立地現象をとらえたり、また制度としての都市のありかたを検討するものである。しかし、それらはおしなべて都市政策へとつながるものでなければならない。最終的な到達点は都市政策であり、そこへいくための様々なアプローチなのである。

都市政策を考えるための都市経済(学)であるが、都市はその存在理由からして外部経済・外部不経済の宝庫であり、それがために都市政策が存在する。都市に対して経済学的な見方をすることは、たとえば都市計画における土地利用規制が実施される場合であれば、それによってどのような外部不経済がどの程度押さえられ、土地利用の社会的価値がどの程度高まるかを分析することで土地利用規制の有効性を判断することである。これはミクロ的な都市の経済分析であるが、都市を人間活動の器と見なしたマクロ的な分析もまた有効である。

少子化と高齢化で社会減を自然増がカバーできなくなり都市の人口減が進む中、地域内では優位性を維持してきた県庁所在都市ですら人口減少の事態に直面しているところが地方では少なからず存在する。他方では、国からの交付税や補助金に依存していた都市では、厳しい都市経営を強いられている。

こういった状況で地域主権が言われる中、都市経済の自立の可能性がなくしてはそれもむなしい。確かに外的要因による都市経済の低迷もあるが、むしろその本質は都市経済の構造に問題があるのではないか。

都市政策には、都市内の空間構造に焦点を当てたミクロ的分析と都市全体をとらえたマクロ的分析とがあるが、本稿では都市経済の自立のためとその持続性に関するマクロ的とらえ方について述べたいと思う。

2. 都市の成立と規模

そもそもなぜ都市というのは存在するのであろうか。「都市」というのは、統計的には「一定以上の人口が集積している人口が稠密であるところ」として定義される。また性質的には「都:賑わい」と「市:交易」の場所という意味であるが、この「市:交易」という部分には重要な意味がある。すなわち、交易の場所と言うことは、そこに多くの人々が訪れ、財貨・サービスを販売し購入するのである。また、そこから財貨・サービスを移出することで域外マネーを獲得し、それを地域内で循環することで都市は生計を立てているのである。こういった交易の規模が大きいと、都市の規模も必然的に大きくなってくる。

移出財を生み出すには、生産に規模の経済が必要である。もし生産において規模に関して収穫一定であれば、全ての財を個々の企業が生産するので集積の必要はないので、各戸が裏庭の自給生産経済を営むことになるであろう。

一企業の生産活動において大きな規模の経済があると、一定の大きさの都市が形成される。たとえば、固定費用の大きい造船(佐世保や玉野市)、鉄鋼(釜石市や室蘭市)などである。これらは都市の基盤部門として移出産業を形成している。その移出財によって都市の生計が成り立つ。そして、こういった基盤産業の従業員と家族がいることで、スーパー、病院、学校、郵便局、運輸業、不動産、各種の対個人や企業へのサービス業などが派生産業として成立する。これらは域内需要部門とも呼ばれている。したがって、企業の規模の経済性が大きいほど都市規模は大きくなることになる。

しかし、通常は一企業の規模の経済性は無限に続くものではなく、一定の大きさで収穫逓増は使い果たされてしまう。結果、その企業が持っている固定費用の大きさで都市規模は決まる。都市で養える人口規模も決まってくる。もちろん大きな企業には、その下請けや孫請けをする関連企業の存在もつきものであるので、関連企業の存在も都市規模に影響を与える。

表-1は、大工場が立地する都市を取り上げて、その人口推移を示したものである。鉄鋼の室蘭市と釜石市、福山市、三井造船の玉野市と佐世保重工業の佐世保市、日立製作所の主工場のある日立市などの昼間人口である。これを見ると、福山市以外は人口のピークが昭和の時代においてすでに現れていることがわかる。釜石市では昭和35年以降人口は減少一途である。室蘭市も昭和45年からの20年間で5万人もの人口が減っている。玉野市では昭和50年のピーク時から15年間で1万人近くの人口が減っている。これらは、一業種の大規模の経済で成立する都市規模の限界を表していると言えよう。

表-1 大規模経済と都市規模
表-1 大規模経済と都市規模

日立市では、日立製作所以外に関連企業、日立電線や日立化成工業といった産業分類では電気機械製造業以外に属する企業の存在が有り、これが都市規模を20万人台にしている理由と言えよう。佐世保市でも造船業以外に食料品製造業など複数業種の集積が都市規模を維持している要因と思われる。また、福山市は旧日本鋼管以外にも、福山通運本社が1万人以上の従業員を抱えており、他にも企業集積の多様性が都市規模の大きさの理由となっている。都市の持続可能性からすれば、単一業種による規模の経済では、自ずと限界があると言えよう。

個々の企業が特に大きくなく収穫一定でも、それらが同一地域に相互に集中するによって外部経済を得て産業全体としての収穫逓増が生まれ、それによって都市が成立することがある。これは「地場産業のまち」と言われる都市であり、国内に多くの実例がある。めがねの福井県鯖江市(昼間人口:6万4054人)、金属洋食器の新潟県の燕市(昼間人口:8万3941人)、木製家具の福岡県大川市(昼間人口:3万9576人)、陶磁器の佐賀県伊万里市(昼間人口:6万501人)や唐津市(昼間人口:12万3985人)繊維の桐生市(昼間人口:12万6811人)など枚挙にいとまがない。(昼間人口は平成17年のもの)。これらは、漆器や繊維、衣服、家具などの企業集積で生まれた都市であるが、もちろんそれだけではなく、鯖江市などは繊維産業の集積地としても有名である。

大規模経済の都市にしても同業種集積の都市にしても、そこでの製造品を域外に出荷することで所得を稼いでいることに変わりはない。しかし、どうしても都市規模の大きさには限界がある。人口が100万人を超える大都市の誕生には別の集積の累積的要因が働くが、そこまでいかなくても地方の県庁所在市の多くは、工業都市ではなく商業・サービス業でなりたっている都市である。そこでは、都市内だけでなく県内他都市へもサービスを移出している。県庁の存在は公的支出という形で県内市町村へのサービスの提供を行っており、地方銀行の本店や大病院は、県内各地にその顧客を持ちサービスの移出をおこなっているのである。サービスの場合はどうしても対面行為になるので、工業都市に比べて都市規模が大きくなる。その結果、小都市では成り立たない専門的サービスも成り立つし、小売り品の多様性も見ることができる。

3. 地域自立の要件

このような地方の都市経済が持続可能であるためにはどのような条件を満たしていることが必要であろうか。ここで言う持続可能な都市経済とは、基本的に「自立できる経済システムが継続していること」と定義することができよう。

直接的に考えると、それは「都市が自ら生活の糧を稼ぎ出せること」である。そして、この「自ら生活の糧を稼ぎ出す」と言うことを「どこからか」という観点で考えてみると、1つは自らが域外マネーを獲得することであり、もう1つは域内で所得(付加価値)を生み出すこととなる。

前者は、域内に資金を呼び込む力(移出力)であり、都市経済の移出力・輸出力の存在である。これには、外貨を稼ぐ移出産業としての基盤産業の存在が必要である。後者は、域内に来た資金を循環させ流出を防ぐ力(循環性)である。言い換えれば、域外から獲得した資金と域内にある資金を如何に地域内で循環させるかという「循環性」の問題である。資金が循環することは、その段階で誰かの所得になっているわけである。

これらを可能にするために、地域資源の有効利用(比較優位性の発揮)が不可欠である。人材の発掘や育成、自然環境や伝統文化の維持・継承など幅広い地域資源の発掘と研磨が、地域産業の優位性(移出力)を保つことにつながる。

また、比較優位性を活かして都市の移出を高めていくのは地域自立の基本的概念であるが、時代(時間)とともに都市のもっている比較優位性というものは変化する。それは、新たな競争地域の出現や需要地域の嗜好の変化などの理由による。したがって、絶えず比較優位なるものを作り出していく必要がある。これを地域間競争の文脈で考えると、競争優位性の維持とも言える。グローバル化する地域経済環境において、都市の比較優位性や競争優位性の検証は、地域自立のための重要な課題と言えよう。

比較優位を創出し移出力や循環力を高めることは自立した都市経済の基礎条件であるが、それが継続性することが持続可能性につながる。これに関しては、産業構成や職種構成における特化度や多様性から見た都市経済・地域経済の安定性が必要となる。モノトーンの産業構成は、地域特化度は高いかもしれないが、しばしば景気変動の影響を受けやすい。

4. 地域自立の課題

確かに域外マネーを獲得するために移出産業に力を注ぐことは重要であるが、留意しておくことがある。それは、地域経済の規模が小さい場合は、移出を増やそうとするとそれ以上の割合で移入が増えてしまうことがあるからだ。アウトプットを増やそうとすれば、インプットも当然増やさないといけないが、そのインプット、特に中間投入が域内で調達できないことが小さな都市では頻繁に生じる。これでは、いくら移出部門を活性化しても移入超過となり、都市の所得は増加しない。

都市の経済集積を高めることが基本ではあるが、それでも域内で調達できないことの理由がどこにあるのかを見極めておくことは重要である。移入代替の可能性を探るのであるが、供給できる企業の存在があっても技術的な理由によるものであれば、行政の支援も必要となってくる。また、なければ川上に位置する企業の誘致も必要となってくる。

もう1つの課題は、生み出した付加価値が域外に流出している場合である。流出している理由には、消費の機会が地域にないか、あっても機会の多様性がない場合とか、地域に投資機会が少ない場合などが考えられる。より広域的に地域をとらえ、移入代替策での投資機会の創出のための地域間連携を考えることも念頭におくべきであろう。

5. 都市経済の構造分析

前節で紹介した経済循環がうまくゆくにはどうすればいいのだろうか。その基本は自らの地域の経済力を知り、何が充足して何が不足しているかを見極めることであろう。そして、何処に循環の漏れがあるのかを見出すことであろう。それは、都市経済の構造分析をすることにつながる。都市経済の構造的問題点を抽出し、都市経済にその処方箋を講じる分析を地域あるいは都市経済の構造分析と呼んでいる。

都市経済の構造分析は次の3つからなる。第1番目は「都市経済循環分析」である。これは都市間・都市内におけるヒト、財・サービス、情報、マネーの流れを定量的に把握するための分析である。このように書くと堅苦しい感じがするが、地域の所得がどの程度あって、それがどこで使われ、何が地域の需要に対して不足しているか、また地域の基盤産業は何で、その状況はどのようなものなのかなどを認識しておくことである。第2番目は、「都市経済のストック分析」である。私的資本、人的資本、社会資本、自然資本などの賦存量の調査である。たとえば自然資本において森林資源のストック量を把握しておくことは、二酸化炭素の潜在吸収量の把握につながる。こういったストック調査は、都市の比較優位性の発見にもつながる。第3番目は、都市経済が安定的であるかどうかである。先に見た大規模経済による都市は多様性のない産業構造であるがために景気変動の影響を受けやすいというリスクの高い構造となっている。ポートフォリオの観点から、都市成長の安定性と産業構成について検証する「都市経済のポートフォリオ分析」である。本稿では、都市経済循環分析について述べる。

1)地域設定
まず、対象地域の設定について考える。地域の設定としては、市町村単位と通勤圏単位、広域圏市町村単位などがあって、どの範囲でするかは分析の目的と分析者の立場に依存する。1つの経済圏域でやるのが最も望ましいと考えられるが、県の立場からすれば、もう少し広域市町村を考える傾向にある。通勤圏や雇用圏でやると白地の区域が出てきて、都市以外のところが外れてしまうことがあるからである。

1つの行政の意思決定レベルとして、市町村単位でやるというのも1つの考え方である。しかし、隣接市町村で競争した結果、立派な建物が合併市町村で余剰になっているという状況もある。したがって、市町村単位でやると重複して政策の無駄になることがある。望ましいのは通勤・雇用圏域ということになるが、最近の市町村合併で市町村もこの圏域に近づいてきている。

2)都市経済の基本指標
分析の基本的な視点は、人口の長期的な動き、就業者数や失業率などでみた労働市場の動向、財政や生活という3つのパターンに分けられよう。都市経済をみる基本指標は何と言っても人口である。人口動向を長期的に見ると、その地域の栄華盛衰が判断でき、今後どの様な方向に向かいそうなのかの示唆を与えてくれる。

人口の次は都市の労働市場の把握である。生産年齢人口の内、労働力人口は就業者と失業率に分かれるが、就業者数の動向や失業率の変化、近隣地域や類似地域との比較をすることによって、対象地域の労働市場の状況がつかめる。

そして、都市の生活水準や地方財政の基礎となる住民の所得の把握が必要となる。住民所得に関しては課税者対象者に関して市町村単位で補足できるが、合併してなくなった場合は何らかの調査が必要となってくる。たとえば、当該自治体のある県の市町村を対象に人口当たりの課税者対象所得と歳出の差を取った純所得を比較してみることで居住者の平均純便益が県内でどの位置にあるのかがわかる。

3)都市経済を支えている産業の識別
地域社会がその生活の糧である所得を生み出すには、その源泉である資金を域外から獲得するか、獲得した資金も含めて域内の資金をいかに循環させていくかのいずれかである。そこで、地域にとって、どのような産業が域外から所得を稼いできているかを識別する必要がある。それは域外に財を出荷しているだけではない。圏域外に人が赴いてサービスを提供している場合、あるいは域外から人が訪れてサービスを受けている場合も当てはまる(注1)。このような域外から所得を獲得している「域外市場産業」を識別するには産業連関表を用いるのが最もふさわしい。それがない場合には、代替的手法として「特化係数」の大小によって推察することになる。

一方、どのような産業が地域の雇用を支えているか(あるいは雇用を吸収しているか)は、雇用面からみた産業振興策において重要なことがらである。付加価値を生み出すが、あまり雇用を吸収できない産業は、確かにそれは労働生産性からすれば高いのであるが、そういった産業が多ければ雇用を含めた地域の経済規模は維持できない。したがって、まず、どのような産業が地域の雇用の担い手であるかを把握し、それらと域外から所得を獲得している産業とがどのような関係になっているか、さらに、地域に付加価値を創出している産業かどうかを識別することにする。

4)都市の産業連関構造と産業の安定性
・連関効果
ある産業が好調であれば、その産業が利用する中間投入物を生産する産業は、いわゆる需要効果を享受する。また、その産業の生産物を投入要素として用いる下流企業に位置する産業は、投入効果を受けることになる。産業間の取引額は都市経済システムにおいて内生変数であり、最終需要からの誘発額として算出されるが、ある産業の生産活動を外生化した場合に、どのような産業がどの程度の影響を受けるか、あるいはどのような産業にどの程度の影響を与えるかといった連関効果をみることは都市域経済の循環性を測る尺度となる。

その連関効果は、前方連関効果(当該産業からの生産影響度)と後方連関効果(川下産業からの波及効果)に分けられる。

「前方連関効果」とは他産業の投入面に影響を与える効果のことであり、ある産業の産出物でそれが他産業の中間投入物として利用される程度が高い場合、その産業における集積効果や技術革新によって供給費用が低下すれば、その産出物を中間投入として用いる産業は金銭的外部経済を受けるという効果である。「後方連関効果」とは、川下にある産業の生産規模が拡大すると、そこで中間投入物として用いられている生産物を生産する産業の経済活動に外部効果を与えるという派生需要効果である。

・産業の成長性と安定性
都市経済は国民経済よりも規模の面で小さいために、基盤産業である域外市場産業の種類も限定される。その域外市場産業は外的要因(為替レート、産業の国際的な比較優位の変化等)によって影響を受けることが多く、外的要因の急激な変化は地域経済を深刻な状況に直面させる契機となる可能性がある。

従来の企業城下町がこの域外需要産業によって都市経済が成り立っていた典型例であり、すでに述べた造船の玉野市や呉市、鉄鋼の釜石市などが挙げられる。域外需要(=移出)産業が都市経済の発展の原動力であることは間違いないが、都市経済の長期安定を考えるならば、こういった基盤産業が地域に複数あることが望ましい。しかも景気変動に対する影響としては、それぞれが逆の関係にあることが望ましい。つまり、複数の移出産業があり、それらが互いに補完的に機能していることである。産業連関構造からすると、それらの間の連関構造が希薄なことを意味する。しかし、これが実は都市経済が多様化していることを意味し、少数の産業で成立しているのは特化型の都市ということになる。

都市経済の多様性は極めて重要なことである。一般に、産業の多様性が高ければ失業率上昇の抑制にもなる。

5)都市経済における漏れの把握
域外市場産業・域内市場産業を識別した次は、中間投入物をどの程度域内産業から調達し、域外から移入しているかを産業分類別にできれば実態調査等をおこない、域内経済への漏出の程度を推計し、波及効果を分析することである。

・付加価値の漏出
各産業で生み出された付加価値が、地域内にどれだけ循環しているかによって、都市経済に対するインパクトが異なる。たとえば、出荷額が大きくても地域に落ちる付加価値が小さければ都市経済へのインパクトは小さくなる。価格表示での分配所得額となる。この額は、生産要素を提供した主体に分配されることになる。しばしば、工場の事業所では、本社の間接部門に、付加価値の一部を移転している。地方工場にとっては、所得の流出に相当する。

工業統計の事業所数は工場数であり、事業所統計の数字は工場も含めた事業所である。間接部門の事務所(オフィス)が含まれている。したがって、その差が大きいと、工場と非工場の事業所の違いがわかる。

・消費支出における漏出
域内の居住者が得た所得を当該地域で消費することは、域内での商業やサービス業が収入を得ることを意味し、そこで雇用される住民がさらに消費を行うという好循環が生まれる。しかしながら、近年、全国的な傾向として、交通網の整備等により、移動時間・コストが低下している傾向にあることなどにより、域内住民等の消費が域外に流出するケースが見られ、域内の商業・サービス業等の採算性の悪化、品揃え等の魅力の減退、消費の更なる流出、域内雇用の減少、域内消費の減少といった悪循環に陥る可能性が生じている。

・投資支出における漏出
資金を域外から獲得してそれを域内で循環させるといった資金循環は、都市経済の活性化には不可欠である。その例として、収入で消費に回らなかった部分、すなわち貯蓄がどの程度地域への投資に回っているかということがある。地域によっては収益性の高い投資先がなくて、資金が域外に漏れている場合も地方経済には少なくない。都市の経済活動が持続的に維持され、また拡大されるためには、安定的な再投資が必要である。

都市経済における資金余剰は、他に投資先がないとすれば、債券市場や東京のコール市場で運用されている割合が高いと想像される。マクロ経済の貯蓄・投資バランスを適用すると、貯蓄が超過している地域では、域外への資金流出があると想像される。

6. おわりに

都市を活性化させるために様々な政策メニューがある。しかし、限りある予算の下ではそれらのメニューの中から最も有効な政策を選択する必要がある。どれを選択すれば、最も都市経済を活性化できて、住民の効用が高まるのであろうか。

そのためには地方都市の現場を直視することも重要である。しかし、もっと重要なことは、都市の体力(経済力)を把握し、都市の経済循環構造を解きほぐすことである。それによって、不必要なものまで移入する構造になっていないか、産業間の連関構造に漏れがあるのではないか、などを把握することで、より有効な政策が立案できることになる。

『新都市』2010年8月号((財)都市計画協会)に掲載

脚注
  1. 後者の例としては、観光産業がその典型である。

2010年10月8日掲載

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