地域経済の安定性と収益性を目指す コロナ禍を踏まえた地域経済構造分析

中村 良平
ファカルティフェロー

1. コロナで地方経済は

2020年2月、3,711人の乗員乗客を乗せたダイヤモンドプリンセス号内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団発生が発生し、合計712人の患者が確認された。思えばこれが我が国におけるコロナ禍の始まりであった。これ以降、地域別の感染状況は上下振動をくり返し、終息に至ることなく2年近くが経過した。

振り返ってみると、そもそも地方の感染者の多くは東京との往来によって発生したものであった。今年5月の大型連休期間、沖縄県へ首都圏からコロナの自覚症状のない若い旅行者の流入によって、その後の沖縄県の新規感染者が急増したことは記憶に新しい。

その中で度々の緊急事態宣言による地域間の往来規制によって、東京での需要の落ち込みが地方経済にも波及した。この背景には財やサービスの東京集中、また人口分布の首都圏への偏在という我が国の国土構造がある。

しかしながら、地方も首都圏の経済成長の恩恵に従来からあずかってきたことで、東京依存の体質が定着してしまっている。例えば、ブランド型一次産品の出荷先が東京市場にまるまる依存してきたこと、地方に立地する誘致工場の意思決定はほとんどが東京本社によってなされるなどはその典型であろう。近年、地域活性化に貢献してきたインバウンドも、東京への来訪者からの延長線上である。インバウンドの消費需要に依存した地方の観光戦略も、コロナ禍を機に発想を抜本的に変える必要に迫られている。もっと言えば、コロナ禍を経験してきたことで、我々は地方振興のあり方自体を根本的に改めるといった発想の転換が不可欠となる。

産業立地 2021年7月号に掲載

2021年8月27日掲載

この著者の記事