執筆者 |
内野 泰助 (研究員) |
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発行日/NO. | 2011年11月 11-J-071 |
研究プロジェクト | 効率的な企業金融・企業間ネットワークのあり方を考える研究会 |
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概要
本稿は、2008年のリーマン・ショック時に日本の社債市場が一時的に麻痺したことを自然実験として利用し、企業の銀行依存度と設備投資の資金制約の間の因果関係を明らかにすることを目的としている。日本においては、社債市場が機能不全に陥る一方、銀行部門は健全性を維持したため、社債市場への依存度を高めた「銀行離れ」をした企業が最も強くショックを受けた。本稿の分析では、同時期に大量の社債償還を迎えた企業の設備投資支出と銀行借入条件の変化を、銀行依存度の高い企業のものと比較することで、「銀行離れ」した企業が資金制約に陥ったかを検証する。本稿の実証結果により、(1)大量の社債満期を迎えた企業は、設備投資支出を削減していなかったこと、(2)一方、それらの企業では高い銀行借入残高の伸びが確認されたこと、(3)社債満期を迎えた企業のうち、メインバンクと資本関係にある企業では金利の上昇を伴わずにより高い銀行借入の伸びが確認されたものの、設備投資支出については有意な差が検出できなかったこと、がわかった。これらの実証結果は、日本の上場企業にとって銀行依存度を低下することの費用は存在するものの、設備投資支出に影響を与えるほど深刻なものではないことを示唆している。
※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:(11-E-073).