サービス業の生産性と密度の経済性-事業所データによる対個人サービス業の分析-

執筆者 森川 正之  (上席研究員)
発行日/NO. 2008年4月  08-J-008
研究プロジェクト サービス産業生産性向上に関する研究
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概要

本稿は、サービス業における規模の経済性、範囲の経済性、密度の経済性といった基本的な観察事実を明らかにすることを目的として、サービス業の中でも「生産と消費の同時性」が顕著な対個人サービス業約十業種を対象に、生産関数の推計や生産性格差の要因分解を行ったものである。

分析結果によれば、(1)ほぼ全てのサービス業種において「事業所規模の経済性」、「企業規模の経済性」、「範囲の経済性」が存在する。(2)全てのサービス業種で顕著な(需要)密度の経済性が観察され、市区町村の人口密度が2倍だと生産性は10%~ 20%高い。この係数は、販売先が地理的に制約されにくい製造業と比較してずっと大きく、サービス業の生産性に対する需要密度の重要性を示している。(3)付加価値額ではなく数量ベースのアウトプットを用いて推計しても以上の結果は追認される。(4)全国サービス事業所の生産性格差のうち、都道府県間格差で説明される部分はわずかだが、市区町村間格差の寄与は比較的大きい。

これらの結果は、事業所レベルでの集約化・大規模化、企業レベルでの多店舗展開やチェーン化が、対個人サービス業の生産性向上に寄与する可能性があることを示唆している。また、仮に人口稠密な地域を形成していくことができるならば、生産性に正の効果を持つことを示唆している。ただし、この点は生産性向上と他の社会的・経済的な政策目標との間での選択にも関わる。