エビデンスは政策立案に影響を及ぼすか?-自治体職員を対象としたコンジョイント実験による分析-

執筆者 伊芸 研吾(エビデンス共創機構)/梅谷 隼人(神戸大学)/小林 庸平(コンサルティングフェロー)/高橋 遼(早稲田大学)/中室 牧子(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2026年3月  26-J-014
研究プロジェクト 機能するEBPMの実現に向けた総合的研究
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概要

エビデンスに基づく政策形成(EBPM)の重要性は国や地方自治体において広く認知されているものの、実際の政策形成は多様な主体が政治的・組織的調整を行う複雑なプロセスであり、形式的にEBPM を導入してもエビデンスが実際の意思決定に反映されるとは限らない。本研究ではサーベイ実験の一種であるコンジョイント実験を用い、自治体職員による政策案選択に影響を与える要因を検証し、エビデンスが政策判断に及ぼす影響を分析した。分析の結果、近隣自治体で類似事業が実施されていることが政策案の選択に大きく影響しており、その影響力は首長や上司の意見、議会・住民・業界団体の反応と同程度であった。事業の有効性を示したエビデンスの影響は相対的に小さいが、「効果なし」のエビデンスは負の方向に極めて大きな影響を及ぼすという非対称性が確認された。また、海外のエビデンスの影響は近隣自治体のものよりも小さいことが確認された。さらに、統計分析の経験やEBPM の取組へ協力的な姿勢を持つ職員ほど、より厳密なエビデンスを重視する傾向が見られた。これらの結果は政策過程におけるエビデンス活用の実態と限界を示しており、EBPM の実装に取り組むうえでエビデンスの需要者(自治体)および供給者(研究者)双方が取り組むべき課題を浮き彫りにしている。