トランプ関税2.0の影響と企業の対応はどう異なるか:企業アンケート調査による記述的分析

執筆者 伊藤 萬里(リサーチアソシエイト)/神事 直人(ファカルティフェロー)/直井 恵(カリフォルニア大学)
発行日/NO. 2026年2月  26-J-008
研究プロジェクト 企業のグローバルな経済活動が直面する課題と直接投資の効果に関する研究
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概要

本稿は、いわゆる「トランプ関税2.0」を念頭に置いた独自企業アンケートに基づき、関税ショックに対する影響の有無・強度と対応の有無・内容を企業属性と結び付けて概観する。主な所見は三点である。第一に、影響は対米輸出企業を中心に広く観察され、特に対米の関係会社向け(企業内)輸出企業では影響がとりわけ大きく、社内取引の固定度や原産地・価格・関連規制面などの実務的制約と整合的である。加えて、北米輸出曝露が小さい企業においても、サプライチェーン上の上流に位置する企業ほど影響が大きい傾向がみられ、直接輸出だけでは捉えにくいサプライチェーン経由の波及を示唆する。第二に、対応は企業規模(売上高)と強く関連し、特に大規模かつ高生産性の企業で対応が進みやすい傾向が示唆される。第三に、対応策として、対米企業内輸出企業は現地生産化への選好が相対的に強い一方、非関係先向け輸出では価格・コスト面の調整が選好されやすく、対中・対アジア輸出を持つ企業では第三国シフトを通じた地域ポートフォリオの再編(域内の深掘りを含む)を志向する傾向がみられた。政策的には、負担緩和に加えて、規模の小さい企業が実装面で直面する固定費や体制制約を踏まえた適応能力の底上げ、および第三国展開に関わる実務支援の拡充が求められる。