専科教員配置が学力に与える効果

執筆者 伊芸 研吾(慶應義塾大学)/中室 牧子(ファカルティフェロー)/村川 智哉(ハーバード大学)/レ・クン・チエン(在ベトナム日本大使館)
発行日/NO. 2025年12月  25-J-029
研究プロジェクト 機能するEBPMの実現に向けた総合的研究
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概要

千葉県下の小学校に非常勤専科教員をランダムに配置することが、児童の学力等に与える因果効果を明らかにする。理科の非常勤専科教員が配置された処置群の学校では、児童の理科の学力が上昇した。ランダム化比較試験の結果、理科の専科教員の配置によって児童の理科の学力が統計的に有意に0.153~0.162SD 上昇することが示された。これは、教育に関する介入としては、これ以外のさまざまな介入(例:少人数学級の実現)と比較してかなり大きな効果があると言ってよい。また。理科だけでなく、算数の学力も統計に有意に上昇し、0.101~0.108SD 上昇することが明らかになった。国語の学力には変化がなかった。しかし、算数の専科教員の配置は、児童の学力に統計的に有意な効果を与えないことが示された。担任教員は専科教員の配置によって、特に他の教科における授業準備時間を増やしたというエビデンスは確認できない。理科は専門性が高く、教える教員側の不安感が強く、効力感が低い教科であることが知られている。この不安感や効力感は経験年数とともに低下していくことが示されており、専科教員が比較的年齢の高いベテランの非常勤教員だったことが功を奏した可能性がある。

本稿は、英語版のディスカッション・ペーパー(25-E-111)の日本語版である