執筆者 | 島村 勇太朗(TDSE 株式会社)/滝澤 美帆(学習院大学)/宮川 大介(早稲田大学) |
---|---|
発行日/NO. | 2025年6月 25-J-013 |
研究プロジェクト | 東アジア産業生産性 |
ダウンロード/関連リンク |
概要
本研究は、日本における産業-年レベルの規制の強度(規制指標)を計測するためのツールを構築した上で、このツールを用いて、規制の強度と産業-年レベルで計測された実質GDP や生産性といった変数群との関係をリード・ラグ構造を含めて実証的に検討したものである。規制指標の計測にあたっては、内閣府(2006)で提案された方法を基に、許認可等現況表に掲載されている許認可の事項名や根拠となる法令名、更にその区分などの情報を網羅的に参照することで複数の規制指標を構築した。これらの規制指標の中から、OECD が構築した規制指標(Nicoletti et al., 2001)に近しい動態を示す指標に注目した上で、業種をプールした分析から、第一に、マークアップ率が高い産業において、事後的に業種固有及び業種横断的な規制緩和が進む傾向が確認された。第二に、製造業と商業を個別に取り扱った分析から、これらの業種における規制緩和の進展後に、当該業種における資本と労働の質が改善しつつマンアワーが低下する傾向も確認された。以上の結果は、本研究で構築された規制指標が、産業レベルの経済変数に関する動態を検討する上で有益な情報であることを示唆している。