執筆者 | 吉田 悠記子(京都大学)/本庄 裕司(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2025年5月 25-J-012 |
研究プロジェクト | ハイテクスタートアップと急成長スタートアップにおけるアントレプレナーシップ |
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概要
本稿は、日本、イギリス、韓国を対象に、個人の起業意識の要因を明らかにする。経済成長のために起業および起業意識が重要になっており、これまでの間、起業意識の要因について議論されてきた。ただし、起業意識の要因が他国に共通する特徴か、もしくは日本独自の特徴かについて議論の余地がある。そこで、本稿では、日本、イギリス、韓国でアンケート調査を実施し、日本の起業意識の特徴を明らかにする。調査結果から、日本、イギリス、韓国では、起業意識の要因は、共通しているものもあれば、異なるものも存在することが明らかになった。例えば、副業しているもしくは副業に関心がある場合、スタートアップ企業との取引経験や投資経験がある場合、また、特許の出願・取得に関わる経験がある場合、3ヵ国すべてにおいて起業への関心が高い。一方で、イギリスや韓国では、生計を一にする家族がいることが起業への関心を高めるが、日本ではこうした影響はみられないなど、日本独自の特徴がみられている。吉田・本庄(2023)と同様に転職をベンチマークとして比較したところ、日本は起業意識より転職意識が高く、イギリスは転職意識より起業意識のほうが高く、さらに、韓国は、起業意識と転職意識は同様の傾向がみられる。イギリス、韓国では、起業と転職は近しい位置づけであるものの、日本では、起業と転職は異なる位置づけといえる。全体的に、日本は、起業意識が他国と比較して低く、その背景に日本独自の要因が示唆される。