生物学的性差が日々の体調変動と生産性に及ぼす影響の実証分析:日次パネルデータによる男女比較

執筆者 黒田 祥子(ファカルティフェロー)/荒川 豊(九州大学)/藤田 周弥(さんぽワークス株式会社)/荒木 郁乃(積水化学工業株式会社)
発行日/NO. 2025年3月  25-J-006
研究プロジェクト 多様な働き方と健康・生産性に関する研究
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概要

本研究は、生物学的な性差に着目し、男女の日々の体調変動が生産性にどの程度影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とするものである。一般的に、女性は月内にホルモンバランスが変動するため、男性に比べて月内の体調変動も大きいといわれている。しかし、個々人の体調が日々どの程度変動し、それが男女間あるいは女性間でどの程度異なるのかについての知見は必ずしも多くない。また、日次データを用いて、体調変動が日々の仕事の生産性にどの程度影響を及ぼしているのかについての研究蓄積も乏しい。そこで本研究では、某プライム上場製造業企業で働く20~30歳代男女約500名の協力を得て、56日間連続(28日間×2ラウンド)の調査を実施し、日々の体調や生産性に関する日次パネルデータを構築した。そのデータを用いた結果、以下のことが明らかになった。まず、日々の症状を感じる頻度を男女で比べると、平均的には男性に比べて女性のほうが多いが、症状を感じる日が多い男性も少なからず存在している。また、女性同士で比較すると、女性特有の症状が生じる頻度が多い女性もいれば、そうした症状を感じる頻度が少ない女性もおり、同性内でもばらつきが大きいことがわかった。さらに、症状がある日は性別にかかわらず生産性は低下するものの、同程度の症状がでたときの生産性の低下幅は男性に比べて女性のほうが小さいことが明らかになった。