博士課程卒業者の労働市場成果

執筆者 森川 正之(特別上席研究員(特任))
発行日/NO. 2024年5月  24-J-016
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概要

日本の研究力低下が懸念される中、博士人材を育成・支援する政策が課題となっている。本稿は「就業構造基本調査」(2022年)のミクロデータを使用し、博士卒と修士卒を区分して大学院卒業者の労働市場成果を分析する。その結果によれば、第一に、博士卒は修士卒に比べて就労率が高く、特に女性で差が大きい。第二に、博士卒は修士卒よりも40%以上高賃金である。第三に、細分化した職種をコントロールすると博士卒と修士卒の賃金差は10%以下に縮小し、博士卒が高賃金の職種にself-selectしていることを示している。第四に、博士卒は修士卒よりも就労率の男女差が小さいが、賃金の男女差は同程度ないしやや大きい。第五に、博士卒の生涯所得の割引現在価値は、修士卒よりも男性で17%、女性では36%高い。博士課程就学の投資収益率を概算すると男性、女性とも10%前後である。