起業と転職の意識に関する実態調査

執筆者 吉田 悠記子(NTTドコモ)/本庄 裕司(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年11月  23-J-046
研究プロジェクト ハイテクスタートアップと急成長スタートアップにおけるアントレプレナーシップ
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概要

本稿は、日本における起業と転職の実態を明らかにする。日本政府は2022年を「スタートアップ創出元年」として位置づけ、2022年末に「スタートアップ育成5か年計画」を策定するなど、起業とその成長に期待が向けられている。アンケート調査「起業と転職に関する調査」を用い、自ら事業をはじめる起業と既存企業を選択する転職について、人の属性、経験、能力、思考特性が起業と転職にどのように影響するかを検証する。調査結果から、以下の点が明らかとなった。
(1) 年齢が低いほど、起業意欲と転職意欲は高い。また、男性のほうが起業意欲は高い。
(2) 保有する金融資産が高いほど、起業意欲は高い。
(3) 家族人数が多いほど、起業意欲は高く、家族人数が少ないほど、転職意欲は高い。
(4) 現在の勤務先に対する不満は起業意欲と転職意欲に関係する。また、転職意欲により強く影響しやすい。
(5) 勤務年数が長いほど、起業意欲と転職意欲は低い。
(6) 海外勤務や外資系企業勤務経験、また、スタートアップ(創業前および創業から5年以内の企業)との取引経験や投資経験は、起業意欲と転職意欲を高める。また、起業意欲により強く影響しやすい。
(7) 特許・実用新案に関する経験は、起業意欲と転職意欲を高める。また、起業意欲により強く影響しやすい。
(8) 表彰経験は、起業意欲と転職意欲を高める。また、起業意欲により強く影響しやすい。
(9) 親の起業経験は、起業意欲に影響する。
(10) 起業準備者は、ビッグ・ファイブ性格特性における外向性が高く、同調性が低い。