電子商取引の進展による地域消費構造の変容と地域経済への影響

執筆者 石川 良文(南山大学)/中村 良平(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年8月  23-J-029
研究プロジェクト 地方創生の検証とコロナ禍後の地域経済、都市経済
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概要

インターネット購入を中心とする電子商取引の進展は目を見張るものがある。特にコロナ禍において世帯あたりのインターネット利用支出総額と利用世帯割合が大幅に増加し、その市場規模も大きく拡大した。これまでは自地域の近隣に大型量販店があれば消費の流出が生じるため、自地域内での商業立地の促進により域内消費を高めようとしてきた。しかし、電子商取引の場合は店舗立地による競合とは異なる選択行動になっている可能性がある。電子商取引は距離抵抗がないため、消費者側(消費需要の発生元)と供給者側(消費の帰着先)に大きな空間的乖離が生じる。そこで本研究では、地域内の電子商取引による購買率の規定要因を分析した。分析の結果、地域内における小売店舗の立地規模、地域の年齢別人口構成、隣接市町村との近接度、地域の都市化の度合いが影響していることが示された。

消費者の電子商取引への購買行動が高まると、結果として地域内購買率の減少につながる。地域内購買率の減少は、更に産業連関及び所得消費の連関構造を通じて地域循環に影響をもたらす。本研究では、著者らが開発した市町村レベルの所得消費内生型地域間産業連関モデルに域内消費率の変化を組み込み、電子商取引の進展による地域経済への影響を分析した。