東アジア上場企業(EALC)データベースの作成とTFP上昇率の比較

執筆者 深尾 京司(ファカルティフェロー)/乾 友彦(ファカルティフェロー)/金 榮愨(専修大学)/権 赫旭(ファカルティフェロー)/張 紅詠(上席研究員)
発行日/NO. 2023年7月  23-J-022
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

日本、韓国、中国の上場企業(EALC)のデータベースを使用して、1995年から2018年の期間における企業の全要素生産性の上昇率を、インデックス法を用いて計測した。その際、産出物および投入サービスの価格に関して、日本産業生産性(JIP)、韓国産業生産性(KIP)、中国産業生産性(CIP)データベースからの産業別デフレーターの情報を利用した。このように計測されたデータベースを使用して、日中韓の各産業における全要素生産性(TFP)の上昇率の比較及び生産性ダイナミクスを分析した。

推計結果によると、2000年代におけるTFP上昇率は製造業においては、日本と中国が堅調である一方、韓国が低迷している。非製造業のTFP上昇率に関して日本と韓国は、上昇率は低いもののプラス基調にある一方で、中国はマイナス基調にある。

日本、韓国、中国のTFP上昇率の生産性動学を分析したところ、日本、韓国の製造業のTFP上昇率の変動には、内部効果の変動が大きな役割を果たしていることがわかった。特に韓国の製造業のTFP上昇率において内部効果の大きな低下が観察された。中国の製造業にTFP上昇率に関しては内部効果に加えて、参入効果が重要な役割を果たしている。