チャイナ・ショックが日本企業の雇用に及ぼす影響に関する実証分析

執筆者 羽田 翔(日本大学)/権 赫旭(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年7月  23-J-021
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
ダウンロード/関連リンク

概要

中国のWTO加盟後、多くの先進国において中国からの輸入品との競争(チャイナ・ショック)の増加が雇用と生産性に与える影響は政策担当者の主要な懸念事項となっている。日本も例外ではなく、製造業就業者が全雇用者数に占める割合が減少している状況である。本研究では、経済産業省『工業統計調査』及び総務省・経済産業省『経済センサス-活動調査』の調査票情報、財務省『税関別品別国別表』、国土交通省『全国貨物純流動調査(物流センサス)』を利用し、日本におけるチャイナ・ショックを産業別・都道府県別に計測した上で、チャイナ・ショックの増加が雇用に与える影響を実証的に分析した。分析結果から、中国からの中間財の輸入ショックは日本企業の雇用成長に正の影響があることが示された。一方、資本財については負の影響が示唆された。そのため、中間財の貿易障壁削減やGVCsへの参加、そして資本財から負の影響を受けた特定の労働者や地域や産業における産業間・産業内の労働移動の支援などが雇用成長への鍵となると考える。