慢性緊張型頭痛をもつ労働者に対するインターネット認知行動療法と心理教育の有効性の検証-ランダム化比較試験-

執筆者 中村 英輝(千葉大学)/関沢 洋一(上席研究員)/田口 佳代子(千葉大学)/大川 翔(千葉大学)/佐藤 大介(千葉大学)/佐々木 翼(千葉大学)/田村 真樹(千葉大学)/清水 栄司(千葉大学)
発行日/NO. 2023年3月  23-J-009
研究プロジェクト 新型コロナウイルスの登場後の医療のあり方を探求するための基礎的研究
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概要

目的:緊張型頭痛は、生活の質(QOL)や労働生産性の低下を通じて重大な社会経済的コストを招く、本研究は緊張型頭痛を軽減する上で、セルフ・ヘルプ型のインターネット認知行動療法(iCBT)が心理教育(PE)に比べて高い効果を有するか否かの検証を目的とした。

方法:慢性緊張型頭痛を有する20歳から50歳の勤労者を対象とし、6週間のiCBT群、PE群の2群のランダム化比較試験を行った。主要評価項目として、簡易疼痛評価尺度(BPI)、 副次評価項目として頭痛強度(HIT-6)、頭痛頻度、破局的思考、不安、うつ等を測定した。

結果:適格条件に合致した514名を2群に割り付け、6週間プログラムを1回以上実施した399名(iCBT 群141名、PE群 258名)を解析対象としたプログラム終了後のiCBT群は、PE群との群間比較で、主要評価では有意差はなく、副次評価項目のPHQ-15が6週時に、HIT-6が12週時に有意に減少した。群内の前後比較ではBPIの6週時のベースラインからの変化量は、iCBT群が-0.48、PE群が-0.50で、両群ともに有意にBPIが減少した。また、両群でHIT-6、PCSが介入後に有意に減少した。
本研究では2群の主要評価における有意差は示されなかったが、前後比較で、インターネット認知行動療法あるいは心理教育による緊張型頭痛の改善が示された。しかし、待機群や薬物療法群との比較がないため、結果の解釈は慎重にすべきである。