スキルの保有と利用の実証分析:ICTスキルと英語スキルに着目して

執筆者 佐野 晋平(神戸大学)/鶴 光太郎(ファカルティフェロー)/久米 功一(東洋大学)/安井 健悟(青山学院大学)
発行日/NO. 2022年8月  22-J-032
研究プロジェクト AI時代の雇用・教育改革
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概要

本稿は、経済産業研究所が独自に実施したウェブアンケート調査の個票データを用いて、個人の持つICTスキル(ICTスキル保有)、仕事でのICT利用(ICTスキル利用)の状況と賃金や仕事の特性との関係を実証的に分析した。その結果、ICTスキル保有とICTスキル利用ともに賃金プレミアムがある。ICTスキル保有に関しては、高度になったとしても必ずしもプレミアムは高まらない一方で、ICTスキル利用に関しては、高度になるほど賃金が高くなる。英語スキル保有と賃金には一様な関係が見いだされないが、英語スキル利用には賃金プレミアムが観察される。レベルごとにスキルの利用と保有の対応関係を把握できるICTスキルに着目した分析を行ったところ、個人が持つICTスキル保有とICTスキル利用の水準が一致するのは全体の約78%であり、約16%は保有するスキル対して低い水準でしかICTを仕事で利用していない。中程度や高度なレベルにおいてICTスキル保有とICTスキル利用の水準が一致している場合に賃金プレミアムの高まりが観察される。分析結果より、スキルはそれが十分に利用されることが重要であり、スキルの向上だけではなく、保有されるスキルがより活用されるように、所属企業における環境整備や高度なスキル保有者の労働移動を促進させるような政策が重要である可能性を示唆している。