執筆者 | 長岡 貞男(ファカルティフェロー)/塚田 尚稔(リサーチアソシエイト)/遠藤 志久真 |
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発行日/NO. | 2022年6月 22-J-023 |
研究プロジェクト | イノベーション能力の構築とインセンティブ設計:マイクロデータからの証拠 |
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概要
本稿では、知識の組み合わせの観点から、日本企業の研究開発パフォーマンスを検証する。先ず、新技術の早期の認識と活用、サイエンスの幅広い分野の進展の活用、海外の研究者の発明の活用等、知識を広くかつ早期に研究開発に活用出来る能力が、研究開発成果を有意に高めることを、実証的に確認した。こうした関係は、固定効果を導入した企業レベルの分析でも成立する。次に、同一発明群からの日米Twin特許の評価を比較し、米国では発明におけるサイエンスの活用を格段と高く評価しており、他方で日本の技術市場は、先行技術の早期の認識と活用(技術文献の先行文献からのラグが小さいこと、また外国発明者の発明活用)をより評価していることが明らかになった。第三に、日本版バイドール特許の対象となった発明は、サイエンスの活用など知識の組み合わせの面で高い水準を実現しているが、米国市場での高い評価を獲得するにはいたっていない。また、日本において、博士研究者の拡大、産学連携への支出、政府からの受託研究収入の拡大を行った企業が、サイエンス活用能力を拡大した証拠は見出されなかった。政策と研究への示唆を最後に述べる。