執筆者 | 元橋 一之(ファカルティフェロー)/池内 健太(上席研究員(政策エコノミスト))/KWON Seokbeom(Sungkyunkwan University) |
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発行日/NO. | 2022年4月 22-J-017 |
研究プロジェクト | イノベーションエコシステムの生成プロセスに関する研究 |
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概要
2004年4月に国立大学の改革が行われ、これまで国の行政組織の一部として位置づけられていた国立大学が、国立大学法人という独立の経営主体として、自主的な運営が任されるようになった。その結果、特許の機関帰属が認められるようになって、国立大学からの特許出願は大幅に増加した。大学における研究成果の特許化は、研究成果の社会還元という観点から概ねポジティブに受け止められているが、公的研究資金を用いた科学的知見は特許による囲い込みを行うのではなく、公共知として国民に提供すべきであるという考え方も存在する。また、特許数は増加したものの、大学の研究の質が低下したのではないかという指摘もある。
ここでは、これらの問題点について検証するために、法人化の前後における大学特許の状況について詳細に分析を行った。具体的には、研究者(大学教員)レベルの特許データを作成し、国立大学法人における教員の法人化前後の特許の量・質の変化をDIDモデル(法人化の影響を受けていない私立大学及び公立大学の教員をコントロールグループとする)を用いて分析した。その結果、大学単独特許、産学連携特許とも、出願数が増加するとともに、引用数でみた質についても上昇していることが分かった。特に企業からの国立大学特許の引用数が増加しており、国立大学における特許の機関帰属によって、大学における研究成果の社会還元という観点からの目的は達成されたと考えられる。