スマートシティをめぐる国際標準化―中国の「公衆衛生上の緊急事態に関する国際規格案」から見えるルール形成の現状―

執筆者 内記 香子(名古屋大学)
発行日/NO. 2022年3月  22-J-015
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第V期)
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概要

本稿は、2020年8月5日の日本経済新聞に掲載された、スマートシティに関する中国からの国際規格提案の記事をきっかけとして、国際標準化フォーラムにおけるスマートシティをめぐる標準化活動の現状を分析したものである。スマートシティの主要な国際標準化フォーラムは4つ、①ISOの専門委員会(Technical Committee 268: TC 268)、②IECのスマートシティに関するシステム委員会、③ISOとIECの情報技術の合同専門委員会(JTC 1)のスマートシティに関するワーキンググループ11、そして④ITUがある。これらのほか、OECDやG20においてもスマートシティの概念や原則が議論されており、多くのフォーラムやレジームで議論される背景には、スマート化のあるべき方向性を定義づけたり原則化したりする必要性があることが指摘できる。また、多くのフォーラムやレジームが関われば、その活動が重複したり、競争的になったりと課題も多く、さらにデータ・ガバナンスに関するルール策定の現場と国際標準化フォーラムの現場の接近が求められることも分かった。スマートシティのルール作りの相互関係がどのように展開していくのか、注視していくことが必要である。