地域間サービス価格差と生産性格差再考-卸売・小売業の価格差推計と付加価値ベース価格差への変換を含む再推計

執筆者 徳井 丞次(ファカルティフェロー)/水田 岳志(元一橋大学経済研究所)
発行日/NO. 2022年3月  22-J-008
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域間の分業と生産性
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概要

地域間生産性格差の計測においては、特にサービス分野において地域間価格差の適切な反映が課題となっている。われわれは徳井・水田(2017)においてすでにこの問題に取り組んでいるが、本論文ではその際扱わなかった二つの論点に取り組む。その一つは、卸売・小売業の地域間価格差指数の作成である。SNAが卸売・小売業の生産金額を商業マージン額で定義していることを踏まえて、「小売物価統計調査」の品目データからマージン率を反映させたデータを作成し、絶対的購買力平価の方法を使って地域間価格差を推計する。いま一つの論点は、産出価格ベースの地域間価格差指数の付加価値ベースのものへの転換である。典型的なサービス産業でも、光熱費、通信費、広告宣伝費などの中間投入はあり、それらは産出額の無視できない割合を占めている。そこで、今回は一旦産出価格ベースで作成した地域間価格差指数を付加価値ベースのものに変換する式を導出し、都道府県間産業連関表の情報を使って、付加価値ベースの地域間価格差指数を推計する。そして、これらの二つの効果を反映させたうえで地域間生産性格差分析の再検証を行う。