なぜ人々は外国企業による買収に忌避の姿勢を示すのか?:個人の対内投資に関する選好調査を用いた実証分析

執筆者 伊藤 萬里(リサーチアソシエイト)/田中 鮎夢(リサーチアソシエイト)/神事 直人(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2022年1月  22-J-001
研究プロジェクト 直接投資の効果と阻害要因、および政策変化の影響に関する研究
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概要

本研究は個人の対内直接投資に対する選好の決定要因を、独自に設計したアンケート調査の回答を利用して実証分析したものである。個人の対内投資の選好はグリーンフィールド投資とM&A投資とで異なる傾向が見られ、M&A投資の方が人々の拒否反応が強いことが知られている。本研究の分析結果は、外資に対するいわゆるハゲタカファンドのネガティブなイメージが対内投資への反対と関連し、特にM&Aに否定的な意見を導いている傾向があることを示している。さらに、損失回避バイアスや時間選好率の高さなども対内投資への反対と強い関連性があり、こうした行動バイアスを持つ人はたとえグリーンフィールド投資の受け入れには賛成してもM&Aによる日本企業の買収は拒否する傾向がある。これらの結果は、近年研究の蓄積がある貿易自由化の選好に関する実証結果と同様に、人々の対内投資に対する選好が、学歴や年収といった経済的な属性よりも、非経済的な属性に大きく左右されることを明らかにしている。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:22-E-002