2000年代以降の法人税改革の影響-企業特殊的フォワードルッキング実効税率を用いた分析-

執筆者 馬場 康郎(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)/小林 庸平(コンサルティングフェロー)/佐藤 主光(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年10月  21-J-050
研究プロジェクト これからの法人に対する課税の方向性
ダウンロード/関連リンク

概要

多くの先進諸国において法人税の法定税率の引き下げと課税ベースの拡大という法人税改革が行われてきた。しかし今後の法人税の在り方を検討するにあたっては、今まで行われてきた法定税率の引き下げおよび課税ベースの拡大が、企業にどのような影響を与えたのか検証することは重要な意義を持っている。日本の法人税改革は、法定税率を引き下げながら外形標準課税を拡大するというユニークな形で実施されており、こうした改革が持つ意味を検証することは学術的にも政策的にも重要である。

本稿では、2006~2018年までの企業レベルの財務データを用いることによって、日本における2000年代以降の法人税改革が、フォワードルッキング実効税率に与えた影響を分析した。加えて、フォワードルッキング実効税率の変化が、企業行動に与えた影響を、簡易的に分析した。2000年代以降の法人税改革によって、全体として平均実効税率が引き下げられるとともに、企業間の税率の格差が縮小した。それにより、雇用や投資に対してプラスの影響を及ぼしたことが示唆される。ただし、外形標準課税が拡大された大企業に着目すると、その効果は限定的だった可能性がある。