禁煙プログラムの生産性への短期的影響

執筆者 高橋 孝平 (早稲田大学)/中室 牧子 (慶應義塾大学)/大湾 秀雄 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年7月  21-J-032
研究プロジェクト 人事施策の生産性効果と雇用システムの変容
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備考

初版:2021年6月
改訂版:2021年9月

概要

健康増進法の改正により、2019年7月から、学校・病院・行政機関の庁舎等では、敷地内禁煙となり、2020年4月からは、事務所・工場・飲食店等も、原則、屋内禁煙となった。喫煙による健康被害、たばこ休憩・欠勤・プレゼンティーイズムを通じた⽣産性損失などが先行研究で指摘されてきたが、因果関係を示した論文は少ない。本研究では、製造業企業1社の協力を得て、同社従業員に向けての禁煙支援プログラムを実施し、健康、生産性、職場への影響を評価した。プログラム参加者73人中、禁煙支援対象者となった44名(処置群)の中で禁煙に成功した人は33名で、禁煙成功率は75%に上る。分析の結果、禁煙プログラムへの参加は、1日あたりのたばこ休憩を約27分減少させた。禁煙成功者だけでみると約50分のたばこ休憩時間減少となる。また、禁煙はプレゼンティーイズムを0.5標準偏差改善し、ストレスを0.9標準偏差軽減していることも分かった。10%有意差ではあるものの、過去1か月の病欠日数および健康問題による早退日数をそれぞれ0.5日、0.4日減少させていた。禁煙は、たばこ休憩時間の解消、プレゼンティーイズムの向上、アブセンティーイズムの減少を通じて、短期的にも生産性を押し上げることが分かった。