働き方改革の広がりと実効性

執筆者 高橋 孝平 (早稲田大学)/有田 賢太郎 (みずほリサーチ&テクノロジーズ)/大湾 秀雄 (ファカルティフェロー)/風間 春香 (みずほリサーチ&テクノロジーズ)/児玉 直美 (リサーチアソシエイト)/酒井 才介 (みずほリサーチ&テクノロジーズ)/竹内 誠也 (みずほリサーチ&テクノロジーズ)
発行日/NO. 2021年4月  21-J-021
研究プロジェクト 人事施策の生産性効果と雇用システムの変容
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概要

本稿では、都市銀行の顧客企業を対象に行った独自のアンケート調査に東京商工リサーチデータ、経済産業省企業活動基本調査データを組み合わせて、働き方改革の広がりと、残業時間、離職率、企業業績への効果について検証を行った。働き方改革は2016年以降、大企業のみならず中小企業においても急速に浸透した。各施策の効果評価については、施策導入の内生性によって引き起こされるバイアスの是正が必要であるが、本研究では固定効果モデルとダイナミックパネルデータモデルの2つの推計アプローチを組み合わせることで、内生性バイアスの軽減を図った。結果によると、各種働き方改革が残業時間や離職率に与えた影響は限定的であるが、有給・残業管理施策と柔軟な出退勤施策が残業時間削減につながった可能性が確認できた。ROAや一人当たり売上高でとらえた労働生産性に対する効果は業務選別施策が正の押上効果を持つことが示唆された。働く環境見直し施策が企業によっては生産性の改善につながった可能性も示唆された。くるみん等の認証制度の効果は検出できなかったが、女性が多い第三次産業で、柔軟な出退勤施が残業削減と一人当たり売上増加につながったことは、一部WLB施策の実効可能性を示唆している。