新型コロナショックの経済波及効果-地域間産業連関分析による地域別・産業別分析

執筆者 徳井 丞次 (ファカルティフェロー)/落合 勝昭 (日本経済研究センター)/川崎 一泰 (中央大学)/宮川 努 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年3月  21-J-010
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域間の分業と生産性
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概要

COVID‐19の感染拡大の下で、国内では様々な活動や移動が制限され、消費のパターンに影響を与えたが、それには地域差があった。加えて、この時期には世界全体の貿易活動が低下した。本研究の目的は、こうした影響が、国内の地域間産業連関を通じて各地域にどのように波及したかを分析することである。「家計調査」、「貿易統計」、「宿泊旅行統計」などを産業分類ベースに組み替えるなど加工して、2005年都道府県間産業連関表を使って都道府県別、産業別の波及を分析した。その結果、2020年5月には国内の活動制限に加えて、産業連関波及効果の半分程度は輸出減退で生じたものであった。財の輸出減退効果はその後徐々に回復したが、内需要因と旅行インバウンド需要への影響はその後も続いている。消費縮小は産業連関が都道府県単位の域内で完結しやすい分野で主に発生しており、近隣の都道府県への波及もそれほど大きくない。このことは感染対策と経済活動の秤量を地域ごとに行うことの合理性を裏付けるものである。ただし、人の移動を伴って消費活動が行われる輸送や宿泊など旅行関係分野は例外で、インバウンド需要の「消滅」が1年間継続するとGDPの0.1%から0.2%程度の影響を持つ規模になる。