ものづくり補助金の効果分析:回帰不連続デザインを用いた分析

執筆者 関沢 洋一 (上席研究員)/牧岡 亮 (研究員(政策エコノミスト))/山口 晃 (一橋大学 / 現:科学技術・学術政策研究所)
発行日/NO. 2020年6月  20-J-032
研究プロジェクト 総合的EBPM研究
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概要

本研究では、経済産業省からの要請に基づいて、経済産業政策のEBPMの一環として、平成24年度より中小企業庁が実施している「ものづくり補助金」の効果を分析した。同補助金の採択事業の選定が概ね評価点に基づいて行われていることを踏まえて、2013年度採択分と2014年度採択分の合計6回分の公募次のそれぞれについて、ファジー回帰不連続デザイン法を用いて同補助金の採択事業となることの効果を推計した。さらに、同補助金の2年度分を通じた全体の効果を明らかにするために、メタ分析によって、各公募次の補助金効果の推定値を統合した。アウトカム変数は、工業統計調査(一部は経済センサス-活動調査)の調査票情報に記入された従業者数と有形固定資産額、調査票情報から算出された従業者一人当たり付加価値額と付加価値額のそれぞれの補助金採択の前年から3年間の平均伸び率とした。メタ分析の結果によると、同補助金の採択事業者と非採択事業の間でアウトカム変数の統計的に有意な差は見られなかった(正又は負の政策効果があるとは言い切れない)。ただし、補助金採択が評価点に依拠していない部分があることなどの限界があり、今回の分析結果の解釈には慎重になる必要がある。