メタボ健診の質問票に記載された生活習慣の改善は体重・血圧・悪玉コレステロールの数値の改善にどの程度結びついているか?

執筆者 関沢 洋一 (上席研究員)/木村 もりよ (一般社団法人パブリックヘルス協議会)/縄田 和満 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2020年5月  20-J-030
研究プロジェクト エビデンスに基づく医療に立脚した医療費適正化策や健康経営のあり方の探求
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概要

本稿ではある健康保険組合の男性組合員の特定健康診査(メタボ健診)の3年間のパネルデータを利用して、同健診で使われている標準的な質問票に記載された生活習慣についての質問(喫煙、運動習慣、積極的な身体活動、歩行速度、食事の速さ、遅い夕食、夕食後の間食、朝食の摂取、アルコールの摂取、十分な睡眠)への回答が悪い状態から良い状態に改善された場合(運動していなかった人が翌年にはするようになった場合など)に、その変化に伴って、体重(BMI)、収縮期血圧(SBP)、いわゆる悪玉コレステロール(LDL-C)が改善したかどうかを重回帰分析によって検証した。検証の結果、BMIについては、禁煙や朝食の摂取や十分な睡眠を例外として、上記の生活習慣を改善する場合にBMIの低下が見られた。SBPについては、節酒に伴う低下、禁煙に伴う上昇が見られた他は、有意な変化はなかった。LDL-Cについては、運動や身体活動を行うこと、夕食後の間食をやめること、朝食を摂取することに伴って低下が見られる一方、節酒に伴って上昇する傾向が見られた。本稿の結果を踏まえると、生活習慣の改善は若干の体重減につながる一方で、血圧やコレステロール値の改善にはあまり結びつきそうにない。ただし、本稿で利用したデータが1健康保険組合にとどまること、ランダム化比較試験のような厳密な因果推論の手法に依拠していないこと、効果的な生活習慣の改善がこの質問票に盛り込まれていない可能性があること、血圧やコレステロール値が改善しなくても運動等の生活習慣の改善が重大疾患の予防につながることに留意する必要がある。