特許データと意匠データのリンケージ:創作者レベルで見る企業における工業デザイン活動に関する分析

執筆者 池内 健太 (研究員)/元橋 一之 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2019年3月  19-J-017
研究プロジェクト IoTの進展とイノベーションエコシステムに関する実証研究
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概要

新商品の競合製品に対する競争力の源泉として、技術的優位性(機能的価値)に加えて、デザイン優位性(意味的価値)に対する注目が高まっている。本研究では特許権データと意匠権データを発明者・創作者レベルで接続して、企業内のデザインイノベーションに関する組織について定量的な分析を行う。まず、日本特許庁に出願された特許権及び意匠権のデータから、発明者・創作者の同一人物の同定(Disambiguation)を行うために、(同姓同名の問題が起こりにくい)レアネーム情報を活用して、教師データを作成し、機械学習を用いた分類モデルを作成した。このモデルによって推計された発明者IDと創作者IDを相互に接続することで、特許発明と意匠創作の両者を行っているデザイナーの特定を行った。次に、この情報を用いて特許発明に対する意匠創作者の参画状況を時系列、意匠種類別に整理した。その結果、発明活動と意匠活動の役割分担(Division of Innovative Labor)が進んでいることが分かった。更に、この役割分担は大企業の特許出願人で特に進んでいることが確認できた。その背景には、イノベーション活動の専門分化・細分化が進み、また外部デザイナーの活用やオープンイノベーションの進展が影響していると考えられる。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:20-E-005