執筆者 | 森川 正之 (副所長) |
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発行日/NO. | 2018年3月 18-J-008 |
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概要
長時間労働に関する研究は数多いが、予期せざる残業など労働時間の不確実性を扱った研究は乏しい。本稿は、独自のサーベイ・データに基づき、日本における就労スケジュールの不確実性についての観察事実を提示する。その結果によれば、第1に、5割強の労働者は予期せざる急な残業を行っており、約3割の労働者は予定していた休暇を業務上の事情でとりやめることがある。こうした就労スケジュールの不確実性は、正社員・正職員、長時間労働者で顕著である。第2に、労働者にとって不確実性の主観的コストは大きい。不確実性な残業は予定された残業1.5倍以上と等価であり、確実な休暇は不確実な休暇1.5倍以上と等価である。第3に、不確実性の仕事満足度に対する負の影響は、総労働時間の増加や賃金の減少の影響と比較して非常に大きい。第4に、現実の労働市場において不確実性に対する補償賃金の存在が観察されるが、量的には小さい。
※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:18-E-015