1980年代~2000年代における基準認証行政―政策課題としての経済成長と製品価値向上施策の展開―

執筆者 河村 徳士 (リサーチアソシエイト)
発行日/NO. 2016年5月  16-J-045
研究プロジェクト 経済産業政策の歴史的考察―国際的な視点から―
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概要

本稿は基準認証行政が1990年代後半以降、経済成長政策の一環として重視された意義を歴史的な考え方に基づきながら考察するものである。経済成長の鈍化が常態化し始めた1990年代の後半あたりから、経済成長が重要な政策課題として浮上し、1980年代から既定路線と化した行政関与を限定する規制緩和を前提としながら成長政策を模索せざるを得なくなった日本政府は、市場機能の強化による企業間競争の成果に期待したと同時に、革新的な企業行動の支援をも通産省に求めた。産業政策を後退させていた通産省は、国際的に先行していた製品価値を高める標準の効果を認め、標準を利用した企業戦略の立案を後押しする試行錯誤を進めており、基準認証行政は行政関与が限定された中で経済成長を促す手段として重視されたと考えられる。しかし、国際標準の推進は途上であり、他方で福祉や環境の側面で標準行政の社会的な意義が高まる可能性が考慮できた。