応急仮設住宅の建設と被災者の支援:阪神・淡路大震災のケースを中心に

執筆者 宇南山 卓  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2012年4月  12-J-011
研究プロジェクト 日本経済の課題と経済政策-需要・生産性・持続的成長-
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概要

東日本大震災の被災者に対して応急仮設住宅が、プレハブ住宅ではなく実質的な家賃補助で供与されている。本稿では、阪神・淡路大震災の事例に基づき、恒久化が検討されているこの「みなし仮設住宅」の有効性および問題点について検討した。現行の災害救助法では、現物・現地での救助が原則とされる。しかし、被災地には遊休している既存住宅ストックが存在しており、現物で住宅を供与する必要性は低い。現物での供与では、被災者間の利害調整の必要から時間がかかり、自由な転居も妨げる。しかも、プレハブ建設は、平均的な家賃5年分の財政負担が必要である。生活再建が困難な被災者にとって、応急仮設住宅は実質的な経済支援であり、現金による支援が望ましい。ただし、現金給付にすれば被災者が転出する可能性が高まり、被災地の人口減少の原因となる。被災者の支援と被災地の復興のバランスを考慮して制度設計をする必要がある。