日本と韓国の生産性格差と無形資産の役割

執筆者 宮川 努  (ファカルティフェロー) /滝澤 美帆  (東洋大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-018
研究プロジェクト 日本における無形資産の研究
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概要

日本と韓国は、1997年にそれぞれ金融危機、国際通貨危機という共に大きな経済危機を経験した。しかし、その後、韓国が順調な回復と成長を達成した一方で、日本では依然経済停滞が続いている。こうした両国における経済パフォーマンスの差、特に生産性格差はなぜ生じたのか。本論文では、こうした日韓の経済パフォーマンスの違いを、McGrattan and Prescott (2005a, 2010b)による無形資産蓄積を考慮したモデルを使って説明する。

全般的に無形資産を考慮したモデルのシミュレーションは、無形資産を考慮しないケースよりも日韓の労働時間の動きを良く説明している。このシミュレーションから計算される無形資産部門の割合は、日本が10%、韓国が7%程度である。このシミュレーションを使って、金融危機前後における経済成長の要因を比較すると、日本では金融危機を経て経済成長の鈍化が続いており、有形資産、無形資産とも寄与率が低下している。一方韓国では、金融危機以前は有形資産蓄積を中心とした要素投入型の経済成長であったが、金融危機後は無形資産の寄与率が上昇し、合わせてTFP上昇率もさらに加速しており、日本とは対照的な成長パターンとなっていることがわかった。