病院の生産性-地域パネルデータによる分析-

執筆者 森川 正之  (副所長)
発行日/NO. 2010年7月  10-J-041
研究プロジェクト サービス産業生産性向上に関する研究
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿では、サービス産業の中でも経済的なウエイトが大きく、高齢化が進展する日本経済にとっての重要性が高い医療サービスを対象に、都道府県および二次医療圏のパネルデータを用いて病院の生産性を計測する。主な関心は、医療圏及び病院の規模の経済性である。入院医療サービスの品質の尺度として在院日数を使用して生産性を計測した。個々の病院ではなく医療圏レベルのデータを使用することでcase mixの影響を回避している。パネルデータを用いることで医療・健康に関わる地域特性の影響を考慮するとともに、数量データのみを用いて分析することで価格の地域差や変動の影響を排除している。分析結果によれば、病院の平均規模が大きいほど生産性が高いという関係が確認され、二次医療圏レベルでは地域固有効果を考慮してもなお顕著な病院規模の経済性が存在する。平均病院規模が2倍になると入院医療サービスの生産性は10%以上高く、経済的に大きなマグニチュードである。この効果は、在院日数を考慮しないと観察されないか非常に小さく、病院規模の経済性は主として医療サービスの質の向上という形で生じている。政策的には、病院の集約化等により規模の経済性を活かすことが医療サービスの生産性向上に寄与する可能性を示唆している。