再生医療の普及のあり方-日韓間の規制枠組みの比較を通して-

執筆者 倉田 健児  (コンサルティングフェロー) /Youn-Hee CHOI  (ヴィジティングスカラー)
発行日/NO. 2010年7月  10-J-039
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概要

日本および韓国の再生医療を巡る研究段階から実用化までの現状を概観すれば、研究段階での活動では日本が韓国を凌駕しているものの、実用化に至る事例では圧倒的に韓国が多いという状況にある。このような状況になっているのは何故なのか。その要因に関しては様々な議論がなされており、中には日本の薬事当局である医薬品医療機器総合機構 (PMDA) の審査に対する「姿勢」をその要因に帰する指摘も存在する。

しかしながら本稿における検討からは、こうした指摘の妥当性を見いだすことはできなかった。「姿勢」といった抽象的な行為規範の適否を論じるのではなく、再生医療製品の供給に関する状況を十分に斟酌した具体的な制度の設計と運用を図ることが、日本における再生医療の普及を進める上では、むしろ肝要と考えられる。

このような視点から日本および韓国の薬事に関する規制枠組みの比較検討を行えば、基本的には両国間で同一の枠組みであるものの、大きく明確な相違も存在している。それは、製造販売承認を受けていない新たな医薬品等をヒトに適用するためのパスが、韓国では薬事当局であるKFDAの審査に基づく一本であるのに対し、日本ではPMDAの審査に基づく臨床試験というパスに加えて医師法の枠組みの中での臨床研究という二本目のパスが存在することである。

多くの成果が生み出されている研究段階での日本の活動を再生医療製品の供給という出口に繋げる上では、二本のパスが存在する日本の現行制度は、必ずしも有効に機能してはいない。こうした現状を改め、臨床研究に対しても臨床試験に対してと同様に薬事当局であるPMDAによる審査を実施すること、これが再生医療の普及を推進する上で講ずべき喫緊の課題といえる。

※本稿の一部を抜き出し、これに加筆修正を行った上で英語版にしたディスカッション・ペーパー:12-E-004