執筆者 |
倉田 健児 (コンサルティングフェロー) /CHOI Youn-Hee (コンサルティングフェロー) |
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発行日/NO. | 2012年1月 12-E-004 |
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概要
再生医療に対する期待を受け、日本ではその実用化を政策的に推進するべく、2000年頃から関連する研究の推進を図るための様々な施策が講じられてきた。その結果多くの研究活動がなされ、なされた研究の量においては日本が韓国を大きく凌駕している。しかしながら研究成果の実用化に至る事例では、圧倒的に韓国が多いという状況にある。このような状況になっているのは何故なのか。この点を明らかにするために、再生医療という技術の特質を踏まえ、日本及び韓国における再生医療に対する規制制度に着目し検討を行った。
検討の結果、日本及び韓国とも基本的には同様の規制を実施しているにもかかわらず、明確な相違も存在することが明らかになった。それは、製造販売承認を受けていない新たな医薬品等をヒトに適用するためのパスが、韓国では薬事当局である韓国医薬品庁 (KFDA) の審査に基づく1本であるのに対し、日本では医薬医療機器総合機構 (PMDA) の審査に基づく臨床試験というパスに加えて医師法の枠組みの中での臨床研究という2本目のパスが存在することである。
現行の日本の制度では、一方のパスである臨床研究の成果がもう一方のパスである臨床試験に繋がり難い構造となっている。2本のパスの存在は、研究段階での日本の活動を再生医療製品の供給という出口に繋げる上では、必ずしも有効に機能してはいないのである。こうした現状を改め、臨床研究に対しても臨床試験に対してと同様に薬事当局であるPMDAによる審査を実施すること、これが再生医療の普及を推進する上で講ずべき喫緊の課題といえる。
(本稿は、日本語版のディスカッション・ペーパー(10-J-039)の一部を抜き出し、これに加筆修正を行った上で、英語版にしたものである)
概要(英語)
Though Japan has surpassed South Korea in terms of research and development (R&D) in the area of regenerative medicine, South Korea has been more successful at commercialization. This paper focuses on the setup and operation of actual systems that consider the promotion of regenerative medicine in Japan. Analysis of the regulatory systems in Japan and South Korea shows a clear difference between the two countries, although their systems are basically the same. There are two pathways for applying unapproved drugs in clinical research, including regenerative medicine, to human subjects in Japan, whereas there is only one pathway in South Korea, where the Korea Food and Drug Administration (KFDA) is the only authority through which approval can be obtained. Japan has an additional pathway besides approval through the Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA), if the clinical research is conducted within the framework of the Medical Practitioners Law.
The authors assume that the coexistence of the two pathways in Japan creates inefficiencies in commercializing regenerative medicine products (RMPs). Therefore, to disseminate regenerative medicine in Japan, the authors recommend combining the two pathways under PMDA authority.