執筆者 |
森川 正之 (上席研究員) |
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発行日/NO. | 2007年12月 07-J-048 |
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概要
本稿は、「企業活動基本調査」の2001年から2004年の4年間のパネルデータを使用し、日本企業の生産性の分布(企業間格差)、新陳代謝を通じた産業全体の生産性向上等について、サービス産業と製造業との比較に焦点を当てながら実態を分析したものである。
分析結果によれば、サービス業のTFPの「水準」は製造業より低いとは言えず、サービス業の中には生産性の水準が高い企業が多数存在する。また、サービス業に属する企業のTFPの「伸び」は、製造業の企業と比較して劣っておらず、TFP伸び率の高いサービス企業も多数存在する。しかし、サービス業では規模の大きい企業の生産性上昇率が低いため、売上高ウエイトで集計するとTFPの伸びは大きく低下する。
サービス業の生産性は、製造業に比べて企業間でのばらつきが大きい。生産性の水準及び上昇率の企業間格差の大部分は「産業内格差」であり、「産業間格差」ではない。サービス産業の生産性の企業間格差が大きいのは多様な業種が含まれているからではない。
サービス業及び小売業は、生産性上昇に対する「内部効果」(存続している各企業のシェア一定とした生産性上昇)が製造業や卸売業に比べて著しく小さい。また、サービス業は、企業間の「再配分効果」や「参入効果」が生産性上昇に対してマイナス寄与となっており、この点、製造業をはじめとする他産業と異なる。すなわち、サービス業では生産性が相対的に低い企業のシェアが拡大している。
以上の結果は、サービス産業全体の生産性を高める潜在的な可能性が大きいことを意味するが、同時に、生産性の高い企業が市場シェアを拡大して産業全体としての生産性が高まるというメカニズムが必ずしも働いていないということは、潜在的可能性が自然に顕在化するとは言えないことも示唆している。