概要
我々は、転職者が利用する「職業紹介機関」、「広告」、「縁故」などの「入職経路」の機能に注目し、「入職経路」が離職から再就職に要する「離職期間」及び前職から現職への「賃金変化率」によって示される「労働市場成果」とどのような関係を持っているかについて、比較対象国の個票統計を用いた記述統計分析及び回帰分析によって、日本、米国及び欧州主要国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、英国)の比較研究を行った。このうち、日本についての分析は我々自身が行い、米国及び欧州部分の分析は、独立行政法人経済産業研究所の依頼に基づいて、Hashimoto(2004)及びFahr and Schneider(2004)が行った。本稿は、これら日米欧それぞれの分析結果を用いて、日米欧比較分析を行うものである。
これら日米欧の各分析を比較した結果、日米欧ともに、「公共職業紹介機関」には、非自発的離職者層、低学歴層、高齢層等の労働市場で不利な立場にある労働者の職業紹介経路としての役割があること、また、入職経路の労働市場成果としては相対的に「民間職業紹介機関」が高い国が多いことが確認された。また、日本については、計測に用いた2000年までのデータで見る限り、他の入職経路と比較した「公共職業紹介機関」の相対的な労働市場成果については、欧米に比べて改善の余地が残されている可能性が示された。