やさしい経済学―非営利部門と統計整備

第4回 ボランティアの価値

山内 直人
ファカルティフェロー

総務省の「社会生活基本調査」(2006年)によれば、過去1年間に何らかの「ボランティア活動」を行った人は2972万人で、参加率(10歳以上人口に占める割合)は26%だった。

非営利部門の新しい統計であるサテライト勘定では、ボランティアのマンパワーを、フルタイム換算で281万人、うち非営利部門でのボランティアは210万人と推計している。

ボランティアは無償の労働力であり、国民経済計算だと付加価値や国内総生産(GDP)の構成要素としてはカウントされない。

しかし、ボランティアも有給の従業者と同様に何らかの付加価値を生み出していることは明白であり、非営利サテライト勘定ではその価値を明示的に評価(いわゆる帰属計算に基づく)している。それには、機会費用法と代替費用法という2つの方法がある。

機会費用法はボランティアをする人がボランティアをせずに有給の仕事に就いた場合に得られたであろう報酬(言い換えればボランティアをすることによる機会費用)をもって、ボランティアの貨幣価値であるとみなす。この方法では同じボランティアでも、上場企業の社長が行う場合と失業者が行う場合とで、評価額が大きく違ってくる。

一方、代替費用法ではボランティアが行う仕事を有給労働者が行ったと仮定して、どの程度の報酬が支払われるかという観点から評価し、貨幣価値を計算する。機会費用法では、ボランティア各人の有給労働の報酬データが必要になるが、代替費用法だとボランティア活動に対応する職業別データがあれば済む。

そこで、代替費用法で日本のボランティア活動の貨幣価値を推計すると、GDPの1%超にあたる年間7.2兆円(うち5.3兆円が非営利部門)に達した。この額は、前回みた金銭による寄付の約10倍にあたる。

時間寄付と金銭寄付の割合

ボランティア活動を時間の寄付とみなせば、他の多くの先進国でも時間寄付の価値は金銭寄付を上回る。税制など今後の非営利組織(NPO)政策などを考える際も、この点を踏まえる必要があろう。

2007年11月9日 日本経済新聞「やさしい経済学―非営利部門と統計整備」に掲載

2007年12月6日掲載

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