やさしい経済学―非営利部門と統計整備

第3回 収入構造と寄付

山内 直人
ファカルティフェロー

非営利部門の収入は販売、政府補助、寄付などに大別される。販売は市場でサービスを提供して対価を受け取るもので、営利企業の活動と似ているが、政府からの補助と寄付は直接的な対価を伴わない「移転」であり、非営利団体に特徴的な収入といえる。

非営利部門の新しい統計であるサテライト勘定によると、2004年度の同部門全体の収入構成は、販売56.6%、政府補助37.9%、寄付0.8%、会費3.4%などであった。法人の種類別にみると、公益法人では販売収入が8割近くになるのに対し、社会福祉法人では9割以上が政府補助であるなど、大きな違いがある。

非営利部門の収入構成

寄付について少し詳しくみてみよう。会員制をとる非営利団体の会費は、会員サービスへの対価と寄付の両方の性格をもつ。仮に、寄付と会費を合計して広義の寄付とみなしても、収入全体の4%強にすぎない。米国など多くの先進国では、寄付は非営利部門の収入全体の1割を超えており、日本は寄付収入の最も少ない国の1つになっている。

日本の寄付総額は、04年度で7130億円(うち非営利団体に対するものは約5310億円)と推計される。このうち、法人からの寄付が64%で個人の寄付は36%にとどまる。個人としては一世帯あたり平均5000円弱しか寄付をしていない計算で、寄付の9割以上が個人寄付となっている米国とは対照的である。

個人寄付の総額は阪神大震災のあった1995年だけ増えたが、それ以降は大震災前の水準近くに戻っており、非営利団体の寄付獲得努力や税制によって増加する余地は十分あると考えられる。

寄付に対する筆者らの意識調査によると、寄付をしなかった人が寄付をするようになるための条件として、寄付先の団体の活動や会計に関する報告がきちんと行われていること、寄付の方法が簡便であること、税の優遇措置が受けられることなどが挙げられている。非営利団体の財源確保のためには、寄付支援税制の拡充のほか、寄付先の選択を容易にするような情報提供が重要であるといえる。

2007年11月8日 日本経済新聞「やさしい経済学―非営利部門と統計整備」に掲載

2007年12月6日掲載

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