産業政策が米国や欧州連合(EU)諸国などの先進国で再び脚光を浴び、世界はあたかも「産業政策競争」の様相を呈しています。
世界各国の貿易・投資に関わる政策を記録したデータベースを機械学習で分析した研究があります。それによると、産業政策に分類される政策手段の件数は2022年には10年比で30倍以上に増加しました。
その手段も、過去によくみられた貿易・投資制限といったものから、補助金に加えて、貿易金融などの輸出関連措置の活用が目立つようになっています。
さらには、高所得国が低所得国よりも、産業政策を大幅に多く活用していることも示されています。
日本でも政府内で産業政策の役割を見直す動きが進んでいます。21年には経済産業省の産業構造審議会で「経済産業政策の新機軸」が示され、時代に合わせた産業政策の新しいあり方の模索が始まりました。高市早苗政権で設置された「日本成長戦略会議」では、戦略分野ごとの主要製品・技術や官民投資ロードマップが議論されています。
とはいえ、産業政策が常に肯定的に評価されてきたわけではありません。かつての学術界では、産業政策が効率的な資源配分を阻害するのではないかとの懸念が大きく、むしろ否定的に扱われてきました。
しかし、近年では学術界でも産業政策の研究に関心が向けられています。筆者が学術データベースを使い、タイトルや要約に「インダストリアルポリシー」を含む経済学の英語文献を検索したところ、該当件数は25年に2327件と、10年に比べて10倍以上に増加していました。
この背景には米中間の技術競争などの地政学的変化、人工知能(AI)に代表される技術変化、気候変動の深刻化といった問題があります。学術界では、産業政策の効果を客観的に検証する方向性が強まっています。この連載では、各国での産業政策の展開や、その新たな特徴と課題などを解説していきます。
2026年7月31日 日本経済新聞「やさしい経済学―産業政策の新潮流」に掲載