病気や障害があっても、また介護が必要になったとしても、住みなれた地域で支援を受けながら生活を送ることを望む人は多いでしょう。しかし、世帯の小規模化や核家族化で、伝統的な地縁や血縁による地域社会の支え合いの機能は弱まっています。
国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査」によると、65歳以上の一人暮らし男性の約3割が、ちょっとした手助けで頼れる人がいません。女性の約1割と比べ、男性が地域で孤立していることがわかります。
見守りや相談にのるといった地域社会の支え合い活動は、経済学的には公共財に分類されます。この活動では、特定の人を排除するわけにはいきません。また、ある人を支える活動をしたからといって、別の人への活動が減るということもありません。
こうした地域での支え合いを担ってきた自治会や町内会は、災害が多発するようになったことでその役割が見直されてきています。役員を引き受けた人に負担が偏るなど、とかく批判も多いのですが、これは公共財である支え合いの供給を、人々の自発性に頼っているのが原因です。
自発性に頼れば、自分は活動に参加せず、その便益だけを享受するフリーライダー(ただ乗り)の問題が発生します。ただ乗りによって重い負担を押しつけられた人には不満がたまり、地域での支え合いも社会的に望ましい水準を下回ることになります。
では、どう解決したらよいのでしょうか? 人々のライフスタイルが多様化し、仕事や子育て、介護などで活動を引き受けられない人も多くなっています。まず膨らむばかりの活動内容を精査し、地域での支え合いとして最低限必要なものに絞ります。そのうえで自治会費や町内会費の支払いは義務化します。引き受けた人の善意に頼りきるのではなく、報酬を支払ったり、事業者に外注するなど、金銭的・組織的に透明化することが必要でしょう。地域住民間で公平に負担し、運営していくのがよいのではないでしょうか。
2020年1月30日 日本経済新聞「やさしい経済学―家族の変化と社会保障」に掲載